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ビットコイン、金の脅威に 個人投資家が資金を移動 仮想通貨の実相(14)

2017/12/8

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 従来は金や銀で運用してきた個人投資家の間で、ビットコインなどインターネット上の仮想通貨に資金を移す動きが広がってきた。過去最高値の更新を続けるビットコインは、相対的に価格変動の小さい金に比べて値上がり益を狙いやすいため魅力が高い。中米やアフリカなどの政情不安の強い国から逃避したマネーも、生産量が少ない金の代わりにビットコインに向かっているようだ。

■金への新規投資家数、2年ぶりの低い水準

 英ロンドンを拠点とする金のオンライン取引大手ブリオンボールトによると、11月に新たに金への投資をした顧客数は2015年12月以来の低い水準だった。また、過去12カ月間に新たに貴金属へ投資した顧客数は過去5年の平均と比べて約20パーセント減った。リサーチ主任のエイドリアン・アッシュ氏は「顧客は高値圏の米株式市場だけでなく、急伸するビットコインの取引にも流れていた」と解説した。

 11月の米ダウ工業株30種平均は、月間で3.8%上昇した。株価上昇時のマネーは「安全資産」の金から離れる傾向があり、ブリオンボールトの11月のデータとも整合性はとれている。問題はお金が向かった先だ。11月、ビットコインは6000ドル台から一時1万ドルを上回り、上昇率は47%超と米国株をはるかに上回った。運用リスクに寛容になった個人が新たに仮想通貨への投資を始めたり、株取引で得た利益をより価格変動の大きいビットコインなどに移したりしたと考えられる。

 金と同じ貴金属の銀も、新たに製造された銀貨需要や銀の上場投資信託(ETF)の残高が細っている。銀は金よりも取引量が少なく、価格変動が大きい。ところがその銀も投資家離れが進んでいるという。ブリオンボールトが定期的に実施している調査によると、インターネットの「グーグル検索」で「ビットコイン購入」の検索数は「銀購入」を既に上回り、「金購入」も上回った。

■「実需」の減少にも見舞われる

 金は「実需」の減少にも見舞われている。大消費国のインドで政府が納税意識の低い国民に対し、宝飾品を通じたマネーロンダリング(資金洗浄)規制を強化したためだ。その結果、無国籍の仮想通貨にカネが流れたとの指摘が商品市場には多い。

 インドの仮想通貨取引所では欧米の取引所より1割程度高い価格でビットコインが売買されているようだ。10月にインドを訪れ、金の専門家会合に出席した森田アソシエイツの森田隆大代表は「会合参加者の実に3分の1以上が『仮想通貨が将来、金の脅威になる』との認識を示していた。インドでの仮想通貨市場の盛り上がりを実感した」と驚きを隠さない。

 米ゴールドマン・サックスは10月の投資家向けリポートで「ビットコインは持ち歩く必要がなく、実物資産の金よりも優れている」としながらも、セキュリティで劣る点や、仮想通貨間での競争があることなどから総合的に判断して「仮想通貨は『新しい金』とはいえない」と結論づけた。それでも、投機を好む個人のビットコインへの買いはやむ気配はない。

 ビットコインは8日時点ですでに一時1万7000ドル台に乗せ、過去最高値を更新した。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)はビットコイン先物の取引を18日に始めると発表した。金先物からビットコインの先物に取引がシフトする可能性も意識すべきだろう。

〔日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥〕

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 「仮想通貨の実相」はビットコインやイーサリアムの取引現場での最新トピックや関係者の発言を紹介します。掲載は不定期です。

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