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オタクが楽しく浪費できる「お金の話」 著者に聞く 金融・旬の一冊

2019/4/19

写真はイメージ=PIXTA

「貯蓄から投資へ」のスローガンが登場して久しい。だが積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)といった個人の資産形成を後押しする仕組みは伸び悩み、取り扱い証券会社では従来の顧客層に対する売り込みに限界を感じる営業担当者が少なくない。そんな人たちの間でいま話題なのが、一見すると浪費家で投資には縁がなさそうな「オタク層」に焦点を当てた「一生楽しく浪費するためのお金の話」(劇団雌猫と篠田尚子氏の共著)だ。

「一生楽しく浪費するためのお金の話」ではオタクに資産形成を指南している。

楽天証券経済研究所のファンドアナリストを務め、著名なフィナンシャルプランナー(FP)でもある篠田氏は「オタクのように支出が多い人たちでも仕組みを作れば貯蓄でき、新たな資産形成層になり得る」と指摘。オタク層の金銭感覚の確かさを評価し、消費しながらの資産形成を訴える。篠田氏と共著者のオタク女性ユニット「劇団雌猫」のかん氏に聞いた。

■発想の転換、「使うことで金銭感覚を養う」

――篠田さんはFPにありがちな「家計簿を付けて無駄な消費を減らそう」との主張とは一線を画し、好きなものへの浪費を認めつつ「使う人はためられる」と訴えています。既存の金融関係者からは「本当にできるの?」との突っ込みが来そうですが…。

篠田氏「個人がお金について考えるとき、まず消費があります。『消費を抑制して投資しよう』というのは人間の欲求に反していること。むしろ自分の好きなものを決めてお金を使う人は市場価格をよく意識し、それぞれの出費が妥当かを自分の中の価値基準で換算する能力にすぐれています。お金をためこむ人のほうが無駄な出費が多いものです。そこに注目しました」

かん氏「浪費に肯定的な篠田先生の意見は、オタクの私たちにとってとてもありがたいです」

――「資産形成は難しい」と思っている人は何から始めればいいのでしょうか。

篠田氏「これまで真面目に働いていて、年金や社会保険料をきちんと納めてきた人なら公的保障で最低限の不安要素はカバーできています。個人差がある(公的保障では足りない)部分を自分で考える必要があります。いきなり『老後のお金』と力まずに、まずは『10年で1000万円』を目標にしましょう」

かん氏「私の場合、自分や友人が今のまま楽しく浪費し続けるためにはどうしたらいいかと考えるうちに、資産形成に興味を持ち、周りを巻き込みました」

――具体的にはどんな段取りがよいでしょう。

篠田氏「月6万円、年間で70万~80万円ぐらい投資に回すお金を作るのを目標にしましょう。つみたてNISAと個人型の確定拠出年金(iDeCo)を満額使えばこのぐらいの金額になります」

――月6万円。ハードルが高いように思えますが…。

篠田氏「最初から無理をすると続きません。少額で仕組みを作ることを優先し、収入状況に応じて増やしていくのがいいと思います。そのために、趣味など『減らしたくない』分野への支出額を大まかに把握しましょう」

――それで家計簿を付けるのでは従来と同じではありませんか。

篠田氏「いえ、家計簿を付けるのではありません。オタク分野への出費なら『一定周期で確実にかかる費用』『イベント毎の不確定な費用』『臨時の出費』に分けて書き出すだけです。惰性で続けていたサービスなど減らせるものがわかってきます」

篠田氏は「消費を楽しみながらでもためられる」と訴える

■積み立ては40代からでも遅くはない

――積み立てNISA利用など「こつこつ積み立て」というと若年層向けと受け止められます。年をとってからでは遅いのでしょうか。

篠田氏「寿命が長くなっているので40代なら20年以上運用期間を確保できます。手数料など初期費用の回収を考慮するとiDeCoや積み立てNISAを始めるタイミングの上限は、57歳ぐらいと考えています。もし預貯金など(生活費などを除いた)余裕資金があるなら7割は新規の投資に、残り3割は(株式などの)相場下落時の追加の購入用にと分けてもいいでしょう」

――投資対象を選ぶコツは。

篠田氏「(値動きが大きい)ハイリスク・ハイリターンの投資信託はおすすめできません。まずはリスクコントロールがうまく、相場全体が下がったときにも基準価格が大きく下がりにくい投資信託を積み立てで購入するところから始めましょう。保険や不動産の購入も資産形成には向きません。特に保険は現在、資産を増やすために使える商品はありませんので、あくまで、けがや病気で自分が困ったときの保障として使ってください」

かん氏「オタクは自分が知らない分野を教えてもらったことをきっかけに調べ始め、徐々に(それぞれの違いを理解するなど)『解像度』を上げていって覚えていきます。知らないものを理解してかみ砕いていくのは慣れているはずです」

篠田尚子
慶大法卒。銀行で資産運用の相談業務などを経験した後、2006年ロイター・ジャパン(現リフィニティブ・ジャパン)入社。傘下の投信評価機関リッパーにて投資信託のデータ分析業務、アナリストとして投信評価と市場調査を担当した。13年に楽天証券経済研究所に移り、著書に「新しい!お金の増やし方の教科書」(SBクリエイティブ)などがある。メジャーリーグ好き。
劇団雌猫
平成元年生まれのオタク女性4人組。それぞれの趣味に熱く消費をしながら、オタク女性の「浪費」に関するイベントや記事の執筆などを手がける。編著書に『浪費図鑑』(小学館)、『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』(柏書房)など。

〔日経QUICKニュース(NQN)聞き手は岩本貴子〕

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