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ビットコイン、10月25日に再分裂か 新通貨誕生も 仮想通貨の実相(7)

2017/10/18

 インターネット上の仮想通貨ビットコインが再び分裂するとの思惑がにわかに強まっている。10月25日にも新通貨「ビットコインゴールド」が誕生するというのだ。8月にビットコインキャッシュ(BCC)とたもとを分かって以降、市場では「取引容量の拡大を巡って11月に再分裂する」とささやかれてきたが、今回の分裂騒ぎはそれとは別の流れで起きている。仮に一連の動きがすべて実現すれば、4つめの「ビットコイン系通貨」が生まれることになる。

■香港のマイニング企業が主導か

 ビットコインゴールドへの分裂を主導しているとみられるのは香港に拠点を置くマイニング(採掘)企業だ。マイニングのための暗号の難易度を下げるのは技術的には可能で、彼らは暗号の難易度を意図的に下げ、機材の面で劣る個人もマイニングに参加可能な仕組みを作ろうとしているようだ――。10月に入って突如、話が持ち上がり、市場では現実味を持って受け止められた。

 ビットコインは通常、相場上昇でマイナーの参入が増えれば増えるほど暗号解読の困難さが増す。競争に打ち勝つにはコストをかけて高性能な機材をそろえなければならず、投資家は需給引き締まりを意識して買い向かう。だが、マイニング競争に勝ってもコスト負担が重ければ、マイナーは得たコインをさっさと換金せざるを得ない。価格によってマイニングのしやすさが変わるビットコインの枠組みは、しばしば相場の乱高下をもたらしてきた。ビットコインゴールドはその課題解決の1つのあり方といえる。

 市場は「ゴールド誕生」のニュースをビットコインの買い材料と受け止めた。ドル建ての価格は前週末に1ビットコイン=5800ドルをあっさり突破して過去最高値を更新した。というのも8月の分裂時には事前の警戒感にもかかわらず双方のブロックチェーンは安定稼働し、BCCの取引量が増えるにつれてビットコインとBCCの価格はそろって上昇した。多くの取引所では投資家が分裂前に保有していたビットコインと同数のBCCを無料で提供したため、ビットコインを保有し続けた投資家は大きな利益を得た。その成功体験から「今回もビットコインを持っていさえすればよい」との思惑が浮上したようだ。

 もともとビットコインを巡っては、8月下旬に導入された取引データ圧縮後も取引容量の拡大を巡るコア開発者と中国本土などの一部企業との対立が続き、再分裂の可能性が取り沙汰されていた。11月には取引量自体を1メガバイトから2メガバイトに引き上げる案が実行されそうだったが、これを支持するサーバー数は17日12時時点でビットコイン全体の3.5%にすぎず、コアの開発者たちが「容量引き上げは必要ない」と主張し始めた。「話が違う」と反発した中国勢が新たな通貨を誕生させれば、ビットコインを源流とするコインは「ゴールド」を含め4つになる。

■新通貨の永続性には疑問符

 ただ4通貨体制が来年以降も持続する保証はない。ビットコインゴールドは賛同者がどのくらい存在するかなどの詳細がはっきりしない。市場では「誕生したとしても、本当に価値のある通貨として認められて投資家やマイナーがついてくるのか疑問」(国際通貨研究所の志波和幸・主任研究員)との声が聞かれる。

 取引所からは「発想が短絡的だ」(ビットバンクの広末紀之社長)との厳しい声が出ている。取引所にしてみると、誕生したばかりでシステムの概要もわからない通貨を扱って収益をあげられるか不透明だ。取引所の支持が広がらなければどうなるか。投資家は取引したくても取引するツールが乏しくなる。ローカルビットコインのような取引所外取引は市場規模が大きくならないと広がりづらい。「ビットコインゴールドは遠からず消滅するかもしれない」(国際通貨研の志波氏)との予想も出ている。

■通貨乱立に危うさ

 新通貨が実際は誕生せずに終わったり、誕生してもすぐに消滅したりすれば、ビットコイン本体にも影響が及ぶ。株式や法定通貨などと併用する投資家の打撃が大きくなるかもしれない。

 元財務官で国際通貨研の渡辺博史理事長は「仮想通貨の乱立は金融恐慌のリスクを高める」と警告する。よりよいものを目指す「技術革新」自体は悪とはいえないが、程度問題だろう。

〔日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥〕

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 「仮想通貨の実相」はビットコインやイーサリアムの取引現場での最新トピックや関係者の発言を紹介します。掲載は不定期です。

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