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決算や統計データは疑え 真実は肌感覚との乖離に潜む マーケットエコノミストの極意(15)

2019/3/13

写真はイメージ=123RF

「企業が発表する数字は疑うべきだ。真相に近い重要な情報は口頭でしか得られない」。米国みずほ証券のUSマクロストラテジスト、石原哲夫氏の原点はクレジット(信用)市場。企業の決算資料だけで真実に迫り、将来を予想するのがいかに難しいか。2008年、クレジットアナリストとして直面したベアー・スターンズとリーマン・ブラザーズの経営破綻やその後の金融危機が、米経済の動向を丹念に追う現在のスタイルにつながっている(以下談)。

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■活字から得られる情報はせいぜい2割

石原氏は「企業の決算資料だけで真実に迫り、将来を予想するのは難しい」と語る

サブプライムローン問題が深刻化する直前、調査対象だった米消費者金融の延滞率が急上昇し、危機が近いと気づいた。リポートで警鐘も鳴らした。だが当時は日本の金融緩和策などを背景に「グローバル過剰流動性」の言葉が踊り、誰もがリスクをどんどんとっていく「総リスクオン」の状況になっていた。

リポートへの反響はほとんどなし。不良債権の償却率が急速に上がっていったにもかかわらず市場の危機感は薄かった。まもなくサブプライム・ショックやリーマン・ショックが起きたときに「やっぱりな」と感じたのを今でも覚えている。

当時は流動性に関する規制がなく、企業の資金繰りは財務諸表と最高財務責任者ら幹部の説明を信じるしかなかった。だが、強気だった米銀の一部はその後破綻した。この経験から学んだのが「企業が発表する数字はまず疑え」ということだ。

決算資料などの文字は真実の2割程度しか伝えてくれない。経営者に直接会って声のトーンや話す順番、強調する点、質疑への対応の仕方などを確認したり、周りの企業と比べたりして初めて分かってくることは多い。

数字を疑う姿勢は経済統計を見るうえでも大切になる。例えば米国の物価だ。消費者物価指数(CPI)や個人の消費支出(PCE)で高い割合を占める家賃は、米国の都市部では「2カ月無料」といった特典付きが常識だ。ところが指標では家賃が持続的に上がっている。おかしいと思って担当者に電話をしたら、無料キャンペーンは統計に反映していないと分かった。

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