「仮想通貨、戦国時代へ」 取引所、FX大手参入も仮想通貨の実相(8)

仮想通貨を扱う取引所の経営の透明化などに向けたルール整備が動き出し、関連ビジネスの一層の発展につながると期待されている。金融庁は9月末に仮想通貨の取引所としてまず11社を登録した。ビットコインの現物取引で国内最大のコインチェック(東京・渋谷)の大塚雄介・取締役最高執行責任者(COO)は「仮想通貨の戦国時代が始まる」と語る。仮想通貨の入門書籍として人気を集める『いまさら聞けないビットコインとブロックチェーン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者でもある大塚氏に仮想通貨市場の今後について話を聞いた。

――日本にも仮想通貨ブームが到来したと言われています。

「4月に改正資金決済法が施行され、日本でも仮想通貨が決済手段として認定されたことをきっかけに5月ごろから一気にブームの火が付いた印象だ。数字は公表できないが、コインチェックの口座数はうなぎ登りに増えており、売買高はここ数カ月、『倍々ゲーム』で伸びている。日本は他の先進国に比べて中流階級の層が厚いため、余剰資金が仮想通貨の投資に向かいやすい傾向がある」

ITバブルの富、仮想通貨市場に

――仮想通貨ビジネスも急速に拡大しています。

大塚氏は「取引所の機能は今後、コモディティー化する可能性が高い」とみる

「仮想通貨はインターネット産業の3倍くらいのスピードで発展している感覚がある。IT(情報技術)バブルで富を得た人たちの資金が仮想通貨市場に流れ込んでいることが一因だ。日本では仮想通貨に関する法整備も世界に先んじて進んでおり、事業者が法的リスクをとらなくて済むことが追い風となっている」

――金融庁は9月、仮想通貨の取引所11社を登録したと発表しました。コインチェックが含まれなかったのはなぜですか。

「取り扱っている仮想通貨が13種類と、国内で最も多いことが要因だ。前回登録されなかったのは想定通りで、今後、資金決済法で定められる期間、つまり登録申請書を関東財務局長へ提出後、2カ月以内には登録される見通しだ」

――取引所ビジネスの今後をどう展望しますか。

「取引所が正式な登録事業者となることで市場全体が今まで以上に活性化しそうだ。それは、競争激化という意味で仮想通貨市場の戦国時代の幕開けと言える。これまではベンチャー企業の小競り合い、野球でいう地区予選という印象だったが、これからは外国為替証拠金取引(FX)の大手業者などメジャー級が参入し、存在感が強まることが予想される。仮想通貨の業界はテクノロジー(技術)勝負という側面が強く、資本力が全てを決めるわけではないが、どう打ち勝っていくか考えている」

取引所、コモディティー化も

――取引所は最終的に数社に集約されるとの見方もあります。

「取引所の機能は今後、市場参入時の優位性が失われる『コモディティー化』が進む可能性が高い。そのなかで生き残るために必要な条件は『流動性』(売り買いともに注文が厚く取引自由度の高い状態)と『ブランド力』の2つだとみる。ブランド力は日々の利用者との対話の積み重ねで成り立ち、一朝一夕に構築できるものではない。コインチェックは国内トップクラスの売買高を誇るが、気は抜けない」

――ビットコインなど仮想通貨による決済は今後増えますか。

「コインチェックは支払い、送金がより便利になる世界を目指している。その手段として簡単に素早い決済が世界中で可能な仮想通貨が最も適していると考えている。いまのところ収益性は低いが、送金、決済、寄付といった事業を3年前から地道に続けている。ビットコインを支払いに使える店舗は順調に拡大している。今後はインフラなど日常的な支払いにも活用できるところを増やしていく予定だ」

大塚雄介
1980年群馬県生まれ。早稲田大学大学院を修了し、元リクルート系企業のネクスウェイで法人向け新規事業開発などを手掛ける。2012年にレジュプレス(現コインチェック)を創業し、14年から仮想通貨取引所の運営などを開始する。17年3月に社名をコインチェックに変更。

【記者の目】

情報収集力とブランド力を併せ持つFX大手

ビットコインをはじめとする仮想通貨は相場変動が大きく、投機性が高い。国内での法整備が進むなかでも一般の消費者にとって仮想通貨はまだ身近な存在とは言いがたい。決済ツールとして支払いに使える店舗は次第に増えているが、円などの法定通貨のように広く使われるにはまだ時間がかかりそうだ。仮想通貨取引所の決済事業としての収益性も未知数だ。

マネーパートナーズグループやGMOインターネットなどFX大手は次々と仮想通貨事業へ参入している。大塚氏が指摘するように資本力だけが決め手ではないが、仮想通貨との親和性も高いFX事業ですでに多くの顧客を抱えるFX大手は、情報収集力やブランド力も併せ持つ。仮想通貨は日進月歩で技術的な進化を遂げるなか技術競争や国内でのシェア争いが激化することは間違いないだろう。決済事業などで収益が多角化するよりも先に、体力のない事業者が淘汰されていく可能性は高そうだ。

〔日経QUICKニュース(NQN) 聞き手は鈴木孝太朗、尾崎也弥〕

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仮想通貨の実相」はビットコインやイーサリアムの取引現場での最新トピックや関係者の発言を紹介します。掲載は不定期です。

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