リーマン・ショック 数字がバブルを教えてくれたマーケットエコノミストの極意(4)

写真はイメージ=123RF
写真はイメージ=123RF

バブル崩壊など、相場の大転換点を予測するのはプロであっても難しい。だが市場のプロを名乗るからには的確に分析し、見通しを示す努力を怠ってはならない――。マーケット・エコノミストたちはそんな信念を持って日々業務にいそしんでいる。今回は、第一生命経済研究所で首席エコノミストを務める嶌峰義清氏に市場分析の極意を聞いた(以下談)。

◇  ◇  ◇

市場予測を立てる際にはまず、統計の数字だけで分析し、他のエコノミストの分析リポートや新聞記事はなるべく読まない。というのも、あるとき自分の分析が他人の影響を受け、まねをしているのではないかと怖くなったからだ。これは私のオリジナルだと胸を張って語れるような分析をしたいと考えている。

そのぶん、データは徹底的に精査する。講演などで全国を飛び回っているが、移動中の交通機関の車内や、滞在先のホテルで数百種類の経済統計を前にシナリオを描いている。

なぜリーマン・ショックを予想できたか

嶌峰義清氏はまだ若かった1990年代、「伝説のエコノミスト」と呼ばれた本郷元秀氏から多くのことを学んだ

この独自の分析スタイルで的中させた最大のイベントが2008年のリーマン・ショックだ。06年に住宅データを眺めていたら、数字が私にバブル崩壊を教えてくれた。

予測の方法自体は単純だ。当時の米国では既に、住宅市場の資産価値とファンダメンタルズの間に乖離(かいり)が生じていた。住宅の資産価格は適正水準まで下がるはず。そのとき、過度に上昇していた家計負債と所得のバランスが崩れると感じた。

正直に明かすと、リーマン・ショックの遠因となったサブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)問題は、07年に顕在化するまで知らなかった。統計しか見ていなかったからだ。

調べてみると、一度導火線に火がつくと爆発的に被害が広がる可能性を秘めているとわかった。08年前半にかけての市場ではリスク選好の機運と株高が戻ってきたが、弱気の見通しを変えようとは決して思わなかった。そして9月15日、リーマン・ブラザーズが経営破綻した。

伝説のエコノミストに生きざま学ぶ

エコノミストとしての基礎はまだ若かった1990年代、「伝説のエコノミスト」と呼ばれた本郷元秀氏(故人)から学んだ。本郷氏は晩年病に苦しみ、98年に亡くなるまでは週3回、人工透析を受けなければならなかった。ただそれ以外の時間は全て経済分析に費やした。仕事漬けの姿は昔気質の職人のようだった。

いつしか「本郷氏の一番弟子」と称されるまで多くの時間を過ごすことになった。本郷氏の口癖は「マーケットの予測なんて当たらない」だったが、当たりにくいからこそ、予想を的中させるためにどんな手段でも使う人だった。

近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし