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不動産に株高の効果 「マンションコレクター」出現 不動産の現場から

2017/11/9

株高で超高額マンションの購入希望者が増えている(写真は「ザ・タワー横浜北仲」の建設現場)

 日経平均株価が約26年ぶりの高値を付けるなかで、不動産市場では株高による資産効果ともいえる現象が表れ始めた。億ション、それも10億円以上の複数の超高額物件を収集目的で買いあさるマンションコレクターの出現だ。

 「あの物件の集客はすごい」――。新築分譲マンションの購入検討者だけではなく、不動産業界の関係者の視線が集中する物件がある。場所は横浜。みなとみらい線馬車道駅から徒歩1分、三井不動産レジデンシャルと丸紅が手掛ける地上58階建て、総戸数1176戸のタワーマンション「ザ・タワー横浜北仲」だ。

 話題になったのは販売開始前の反響だ。三井不動産によると「2016年12月の広告開始以来、資料請求数は累計で1万3800件を超え、17年8月から開始した事前案内会を含むモデルルームの公開以降の総来場者は2800組以上に達した」。物件の規模やモデルルームの公開期間に差があるため単純比較はできないが「過去の他物件と比べても、相当多いのは間違いない」(広報部)という。

 これだけの反響があった理由は立地の希少性が大きい。横浜市での最高層・最大規模という要素に加えて、「馬車道駅から至近で埋め立て地ではない点も評価されている」(大手不動産会社の社長)。この場所を逃したら二度とは出会えない、マンション業界でいう「ピン立地」の最たる物件だ。このマンションの最上階住戸もマンションコレクターが購入を検討する物件だ。

■株高による資産効果が「収集」を加速

 マンションコレクターとはどんな富裕層か。東京都心の港区「3A」と呼ばれる麻布、青山、赤坂の人気エリアで最初に現れたコレクターは「特定の目的があるわけではなく、ラグジュアリーブランドの時計を収集するかのようにマンションを買う富裕層」(東急リバブル受託開発部の田仲慶三部長)だ。コレクターの活動区域はいまや横浜を含めて都心中心に広がってきている。

 以前からタワーマンションの最上階だけを狙って買う日本人富裕層はいた。最近コレクターが狙うのはタワー物件に限らず1戸当たり1億~10億円超のマンションが主流だという。「中華系の富裕層は4億円台までが主流。日本人の富裕層、それもオーナー社長が10億円超の物件を買っていくと聞いた」(田仲氏)という。

 マンションコレクターが不動産業界で目立つようになったのは、日経平均株価が今年の安値をつけた4月から持ち直し始め、節目の2万円をうかがうようになった頃だ。

 短期間で転売するわけではなく「億ション」を収集するコレクター。大手不動産会社の役員は「世界的にみると東京の物件価格が割安に映る面もあるし、円安も寄与している。最も影響しているのは株高によって10億円以上の資産を保有する富裕層の含み益が膨らんでいるからではないか」と分析する。

■駅近など条件面での価格差は広がる

 3Aに代表される都心立地やピン立地の物件と対照的なのが、郊外にあって駅からバスを使ってさらに徒歩でたどりつく「バス便」物件だ。ある大手不動産流通会社の社長は「従来なら2割程度だったバス便と駅から近い物件の価格差が倍まで開いている」と指摘する。

 不動産経済研究所によると、首都圏新築マンションの最寄り駅からの平均徒歩時間は9月発売分が6.7分だった。直近では16年1月の8.3分をピークに短縮傾向にある。「駅から7~8分の立地では一戸建てとの競合も激しくなっている」(不動産経済研究所)。

 マンションの価格は不動産会社が取得した土地の値段に建築費と利益を上乗せして決まる。上昇した地価と高止まりした建築費を積算すると、ピン立地や駅近物件のマンション価格は高騰した。つられてバス便物件の価格も上がったが客がついてこなかった。そこで、バス便物件の価格は抑え気味になり、広がった駅近物件とバス便物件の価格差が縮まらない。

 日経平均が上値を試せば試すほど株高による資産効果でマンションコレクターの消費意欲は喚起される。株高に沸く億ション市場とは対照的にピン立地から外れたバス便物件には価格抑制や値引き圧力がかかりやすい。先行き不透明感の強いマンション市場で立地と価格の二極化はさらに加速しそうだ。

〔日経QUICKニュース(NQN)シニア・エディター 齋藤敏之〕

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