マネー研究所

NQNセレクション

負けを潔く認める勇気を 読みはずれれば持ち高解消 すご腕為替ディーラーの至言(和田仁志)

2017/6/20

PIXTA

 インターネットが発展途上だった21世紀に入ったばかりのころ、ロイターやブルームバーグといった高額な情報端末を使えるプロの外国為替ディーラーとネット頼みの外為証拠金(FX)個人投資家との間には歴然とした情報格差があった。何人かのディーラーがその差を埋めようと情報ビジネスの世界に飛び込んだ。「すご腕為替ディーラーの至言」、今回はFX市場向け情報提供会社のグローバルインフォ社長、和田仁志氏。FXセミナーなどで元プロらしい率直な物言いが支持されている(以下談)。

◇  ◇  ◇

■勝つ人は決してぶれない

 現在の相場はなかなか難しい局面ですね。米国のトランプ政権に対する期待先行のドル高は終わり、厳しい現実に向き合う段階に入りました。ただ、米経済の土台はしっかりしており、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ姿勢も特に揺らいではいません。国内では運用難に悩む機関投資家などが外債投資を増やそうとドル買いの好機をうかがっています。なお円高シナリオは描きづらい。いずれにせよ大切なことは、マーケットの転換点とトレンド(基調)を冷静に見極めて、一度「こう行く」と決めたらぶれずに進む覚悟です。

 浮き沈みが激しい外為市場で勝ち続けるのは至難の業です。多くのディーラーが苦汁をなめて業界を去りました。そんな過酷な生存競争を乗り越えてきた人たちはほぼ例外なく、自らたてた戦略に対して投資行動はぶれませんでした。相場はトレンドを作っていても小刻みに上下動を繰り返します。けっこうふらつくので「トレンドが変わったかな」と早とちりして振り回されがちですが、そこで惑わず、自説を貫けるかが勝敗の分かれ目でしょう。

 トレンドを見極めるポイントは日々の需給です。例えば国内の生命保険会社や年金のようにそう簡単には反対売買をしない長期資金が継続的に流れていれば、基調は長持ちします。逆に、切った張ったの短期マネーばかりではトレンドはできません。

 もちろん自分がぶれなければ勝てる、というほど甘い世界ではありません。百戦錬磨のベテランも会心のディーリングは数えるほどしかないはずです。かなりの確率で相場が思った方向とは逆に進み、損失をこうむっている。ただうまい人ほど読みが外れたときには潔く負けを認め、さっさと持ち高を解消しています。損失確定のポイントをきちんと定めて資金を減らさないようにしているのです。

 「勝ち組」の特徴をもう1つ挙げると、マーケットが大好きで、四六時中注視しています。需給がどう偏っているか肌で感じることでぶれない相場観を身につけられるのでしょう。

■ネットも良しあし

 インターネットやFX会社の情報サービス強化、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の発達により、かつてはプロしかアクセスできなかったニュースを個人でも見られるようになりました。そのせいかメディアのニュースヘッドラインなど刹那的な情報に右往左往しやすくなっています。

 情報と向き合うときには需給とトレンド判断の意識を常にもちましょう。ニュースや値動きをみて、市場参加者の息づかいが感じられるようになれれば完璧です。

 ただでさえ現在はコンピューターを通じた自動取引「アルゴリズム」の存在感が増しています。ヘッドラインに基づくスピード重視の取引では到底機械にはかないません。そこは気持ちを落ち着けて、アルゴの揺さぶりに一喜一憂することなく、自らたてた相場シナリオに照らしてどう動くべきかじっくりと判断したいところです。

和田仁志
 1968年長野県生まれ。91年に立命館大卒業後、米シティバンクや英スタンダードチャータード銀行で十数年間インターバンク(銀行間)ディーラーを務めた。その後は証券会社などで外為証拠金業務の立ち上げに加わり、2006年8月以降はFX投資家向けの情報配信にかかわる。08年5月にグローバルインフォ社長に就任。

■記者の目

 06~08年ごろに起きたFXの流行は、大手FX会社や投資情報会社が主導した情報インフラの整備抜きには語れない。欧米ヘッジファンドなどの海外投機筋が日本のFX投資家を「ミセスワタナベ」として認知し始めたのもこのころだ。流れたニュースの一部は当時「プログラム系ファンド」と呼ばれた初期のアルゴリズムファンドと連動し、しばしば相場を揺さぶった。足元でもツイッターやフェイスブックなどのSNS経由でニュースが拡散し、金融機関のディーラーに周知する前にアルゴが反応するケースもある。

〔日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 今晶〕

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL