「クレカでビットコイン払い」 普及へ事業参入相次ぐ仮想通貨の実相(12)

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インターネット上の仮想通貨を用いた決済システムの整備が進んできた。認知度の高いVISAやマスターカードといったクレジットカードのグローバル・ネットワークを通じてビットコインなどを使える仕組みが登場し、一般の消費者がふだんの生活で仮想通貨に触れる機会が増えようとしている。ビットコインやイーサリアムの市場は投機筋だらけでまだ未成熟だが、「実需」の拡大により取引が厚くなれば安定し、市民権を得やすくなる。

英発ベンチャーが日本法人

ビットコインはビックカメラや丸井グループの一部店舗で買い物などの決済に使える。コインを支払いに使うにはまず、仮想通貨を保管する財布の役目を果たす「ウォレット」が必要だ。現時点では仮想通貨取引所が提供する専用のアプリをスマートフォンにダウンロードしなければならない。アプリのインストールは簡単にできるが、仮想通貨を使える店舗と対応している通貨やウォレット(取引所)が少なく、市場拡大のネックになっていた。

そんな不便さを解消するのが、クレジットカード・ネットワーク経由の決済だ。ビットコインをはじめとする仮想通貨の決済サービスを提供する英国発のベンチャー企業、ワイレックスはこのほど、日本法人ワイレックスジャパンを設立しアジア市場に上陸した。ワイレックスのアプリを利用すると仮想通貨を米ドルやユーロ、英ポンドに交換でき、自社が発行する「Wirexカード」を世界中のVISA加盟店で示せば支払い可能だ。日本円への対応も視野に入れながら来春からのサービス開始を目指し、急ピッチで準備を進めている。

ワイレックスジャパンはSBIホールディングスから出資を受けて合弁会社を設立し、アジア事業で提携する。マイニング(採掘)や取引所の運営を手掛けるSBIは仮想通貨の決済ビジネスと連携して事業拡大を狙う。ワイレックスジャパンの最高経営責任者(CEO)でアジア地域責任者の小島和氏は「SBIの顧客から市場開拓をするつもりだが、SBIの取引所利用者でなければワイレックスサービスを使えないなどの制約は設けない」と話す。

国内では既にライバルが登場

決済事業を有望とみなすのはワイレックスだけではない。国内では既にライバルが登場している。マネーパートナーズグループが発行する複数通貨に対応したプリペイドカード「マネパカード」は、提携取引所のZaifに口座を持てば、ビットコインから換金した日本円をチャージできマスターカードの加盟店で使える。ビットフライヤー(東京・港)も口座保有者を対象に、ビットコインを円建てでチャージし、各国のVISA加盟店で使用可能なプリペイドカードの発行を試験的に始めた。

ワイレックスの小島CEOは「2~3年後には新規参入の企業が増えて手数料には下落圧力がかかりそうだ」と話す。手数料の引き下げ競争だけでは企業の体力を落としかねない。そのため、ポイントの付与などで差別化を計る策を検討している。

仮想通貨で支払える店舗やチェーンをひとつひとつ開拓するには時間やコストがかさむ。だが、ワイレックスなどのサービスではカードの加盟店を一気に網羅し、利用の幅がぐんと広がる。競争によって技術開発のペースが速まれば決済スピードは上がるだろう。仮想通貨の保有が多いとされる中国人の観光客を中心とする「インバウンド需要」も大きく取り込めるはずだ。クレカベースの決済事業の将来性は高いといえる。

〔日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥〕

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仮想通貨の実相」はビットコインやイーサリアムの取引現場での最新トピックや関係者の発言を紹介します。掲載は不定期です。

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