ITで非正規雇用の課題に取り組む

セールスフォースファンデーションが実施したビズアカデミーの様子。提供=セールス・フォース・ドットコム ファンデーション

クラウド事業大手のセールスフォース・ドットコム傘下のセールスフォース・ドットコム ファンデーションは、今年8月から9月にかけ、21歳から33歳までの非正規雇用の若者に情報技術(IT)の知識を身につけ、就労に役立つプログラム「ビズアカデミー」を実施。プログラムに賛同する企業・非営利団体への研修を受けられる機会も提供し、8名の参加者のうち1名が正社員として採用された。日本で初めてプログラムを立ち上げたのは、遠藤理恵マネージャーと、入社3年目の丸野遙香さんだ。

約2週間にわたる研修期間には、メンターとしてセールスフォースの社員がITの知識から就労に関する悩み相談までを請け負う。1人につき2、3人の社員がついた。メンターは日ごろ、営業、マーケティングなど採用とは関わりのない業務に従事する社員だ。社内で公募を募り有志で行う。

研修最終日となった9月10日、川原均・セールスフォースドットコム社長は「今回は1回目。今後も夢に向かうみなさんの力になりたい」と語った。プログラムに参加した中国人留学生の周ブンテイ(21)さんは「日本のIT企業に就職したかったので応募した。ソフトウエアやプログラミングの基礎を学ぶことができた」と顔をほころばせた。

なんらかの理由で正規雇用のかなわなかった人たちへの支援活動は、社員の活性化にもつながっている。営業支援を担当する部署の相川仁夫マネージャーは、「チューター活動を通して、管理職としての学びにつながった」と話す。

プロボノ第一歩、新たな課題

NPO法人などが仕事で身に付けた知識や技術を社会貢献活動に生かす「プロボノ」を募集するイベントも活況だ。若い世代に限らず、経験を積んだビジネスパーソンの力にもなっている。途上国の子どもたちに本を贈るNPO法人ルーム・トゥ・リード・ジャパンの小川宏さんらは8月、渋谷でプロボノ募集のイベントを開催。小川さんは2007年から大手電機メーカーの営業部長を経てプロボノ活動を始めた先駆者だ。「子会社へ不本意な出向を命じられ、絶望していたときに米国のルーム・トゥ・リードの活動を知ったのです」

法人営業のスキルを生かし、勤務先の名刺を持ちながらNPOで活動。14年1月に独立、今はルーム・トゥ・リード以外に大学や公的機関まで、4枚の名刺を持ち飛び回る。

課題は組織

プロボノ元年といわれた10年から4年がたち、課題も見えてきた。職場以外の人脈を得られ、スキルを磨ける場所として魅力的だが、時間の制約は大きい。「土日、平日の夜に頑張るしかない」「会社の理解がない」という悩みは多い。あるNPOでプロボノとして活動する公認会計士の男性は「お金より、ヒトが絶対的に足りない」と嘆く。

「NPOへの転職を踏みとどまる理由の最も大きなものは、リスクが大きすぎるから」という人もいる。内閣府によると、平成13年度の職員1人当たりの人件費は平均年227万円。200万円以下の団体が全体の約43%だ。待遇が厳しすぎるため人材を確保できず、プロボノなどに頼る脆弱な組織体制が課題だ。

企業によっては副業規定の問題もある。TFJでは就労規定に違反しないよう、プロボノを希望する会社員には、所属企業への報告を促している。

それでもプロボノとしての社外での活動や、NPOへの出向が職場にもたらす意義は大きいようだ。五十嵐さんは「出向を応援してくれたことで、会社が好きになった。社内でプロボノに関心のある人々のネットワークを組織し、通常の業務だけでは出会えないすばらしい仲間に会えた」と訴える。優秀な人材が職場での絆を深めるプロボノ活動。企業のより積極的な理解が求められている。

(電子報道部 松本千恵)