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岩手・遠野と物語の舞台、九州を結ぶ不思議な縁 「蜩ノ記」ロケ地訪ねて(下)

2014/10/19

全国公開中の映画「蜩ノ記」の主なロケ地となった岩手県遠野市。遠野といえば、民俗学者、柳田国男の「遠野物語」を思い浮かべる人は多いだろう。約120話の構成で、日本の民俗学を実質的に開拓した名著として知られている。蜩ノ記が描かれた舞台は架空の豊後羽根藩で、今の大分県に設定されている。遠野と九州には実は深い関わりがある。

全編ロケ撮影だった蜩ノ記のほぼ7割が遠野市内の計7カ所で撮影された。撮影初日の昨年4月22日。まず撮り始めたのは遠野市街から車で約20分離れた「遠野ふるさと村」近くの附馬牛(つきもうし)町忍(しだ)峠の林道でのシーンだった。

柳田国男も越えた遠野市附馬牛町忍峠

この忍峠を柳田国男も1909年8月に訪れていた。遠野物語の序文で「附馬牛の谷へ越ゆれば早池峰(はやちね)の山は淡く霞(かす)み山の形は菅笠(すげがさ)のごとく」と描写している。このため、峠は現在「遠野物語序文の道」として観光タクシーの周遊コースになっていて、案内板も出ている。

遠野物語は1910年に発表された。柳田は小説を執筆するなど作家活動をしていた遠野出身の若者、佐々木喜善と08年11月に出会い、佐々木が祖父から聞いたテング、カッパ、座敷童などの妖怪の話から山の神や山人など幅広い内容の民話を09年2月まで5、6回にわたって聴取。8月には実情を確かめるため現地に赴いたとみられている。

歴史的建築物でかやぶきの補修が進められている(遠野市土淵町の伝承園)

短期間に突き動かされるように行動を取ったことで、柳田が佐々木の話に並々ならぬ関心を持っていたことがよくうかがえる。この背景には、佐々木と出会う半年前に訪れた講演旅行での体験が関係しているようだ。

柳田は08年5月から約3カ月間にわたって、法制局参事官として九州などへの講演旅行に出た。「阿蘇から熊本、天草、鹿児島から宮崎へ行き(中略)椎葉まで足をのばした」(「故郷七十年」)

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