「教室が7列では授業をしにくい。6列にならないものだろうか」

2010年、英語科の布村奈緒子は、ペアやグループで学習を進めるたびに、不満が膨らんでいった。都立両国は伝統的に、教室が7列で組まれている。しかし、隣同士で組むように指示すると、1列が相手のいない状態になる。

だが、変更すれば一列の長さが伸びてしまい、教室に収まりきれないかもしれない。そして何より、伝統を重んじるベテラン教師の反発が予想された。

しかし、恐る恐る提案すると、思わぬ援軍が現れた。

「それはいいアイデアだ。どうせなら、列は男女を交互にした方がいい」。社会科教諭(現都立足立高校定時制課程教諭)の田口浩明がそう後押しした。そして、6列への変更が実現する。

「女子生徒にほめられたい」

田口には成功体験があった。最初に赴任した偏差値30台の高校では、教科書どころか筆記用具すら持ってこない生徒が多く、教室を歩き回り、授業が進まない。どうしたら、荒れた教室を立て直すことができるか。思い悩んでいた時、ふと高校時代の光景を思い出した。成績は学年で下から5番目だったが、学校に行くのが楽しかった。それは、女子生徒と話ができるからだった。

男女でペアになってディスカッション

そこで、教室にペアワークを持ち込んだ。そして男女で組ませたところ、効果はてきめんだった。女子生徒の前でいい格好をしようと、予習をしてくる生徒まで現れた。偏差値は一気に60近くまで上がった。

両国高校でのペアワークは、さらに進化させている。田口は、授業中に生徒のいい所を見つけては、ほめちぎった。やる気を高める戦略だった。ところが、ある生徒からこう指摘される。

「先生、もうみんなの前でほめるのはやめてほしい」。教師がほめると、生徒の間で「浮く」ことになるという。

そこで、生徒同士がほめ合うスタイルに変更した。隣の人が意見を言ったら、それについて具体的な言葉で15秒ほめる。そうルールを決めているため、相手の発言を必死で理解しようとする。1回の授業で、1人が10回以上ほめる(ほめられる)ことになる。

そして授業の雰囲気ががらりと変わった。都立両国では、授業中に様々な人とペアやグループを組み、ほめたり感謝の言葉を交わす。

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受験は「団体戦」で乗り越える