そして教師たちは、次々と新しい教育法を実験していく。

授業中に寝る権利

都立両国の校舎

「学び合い広場」の中心メンバーの1人、理科教諭の山藤旅聞は、10月から生徒に「授業をパス(放棄)する権利」を与えている。50分間の授業で、5~6の課題を与え、4人グループで話し合う。そのうち1つの課題は「パス」できる。寝ても、歩き回ってもいい。「人間は、リラックスしている時の方が、すごいことを思いつく」(山藤)

ただし、後で、他のメンバーが授業や議論の内容を教えるルールになっている。つまり、意図的に生徒の間に情報格差を作り、教え合わなければならない状況を生み出している。

そんな山藤の授業は、生徒の疑問から始まる。何か分からないこと、興味があることを聞き出して、それに別の生徒が答える形で進んでいく。山藤は司会役のように、議論をコントロールする。自分から「教えるべきこと」を切り出さない。

「教師になった頃は、教科書にあることを全部、教えなければならないと思って焦っていた。でも、すべて教え込むなんて無理。本当に理解すべきエッセンスに絞り、生徒が自分たちで学んでいくように仕向ける」

そこには、都立高校の「ハンディ」がある。授業時間が厳格に決められ、融通が利かないため、私立学校のように細かな受験対策まで教え込む余裕がない。

英語科の山本崇雄が言う「自学力」をいかにつけるか、それが「学び合い広場」に集まる教師の真の目的となっている。そして議論が深まるにつれ、教科を超えて根底で通じ合うものが見えてくる。

「授業時間という足かせが、逆に公立学校の授業の質を高めることになった」。ベネッセコーポレーション高校事業部ユニット長の藤井雅徳はそう見ている。

そして、都立両国は教室の形までが、変化することになる。

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「女子生徒にほめられたい」