2014/11/15

布村の授業では、生徒がプレゼンテーション(発表)する機会が多い。中には、指名される前から、英語で発言する生徒もいる。「成績の良い生徒が授業で活躍するわけではない。言いたいことがある子が、必死で英語を使って伝えようとする」

英語の授業はプレゼンテーションが多い

授業は必ず、プレゼンテーションで終わることになっている。文法が多少、間違っていても気にしない。自ら考え、英語で相手に伝えることを重視する。

「受験に通用しない」を打ち破る

授業の実演が終わると、会場がどよめく。「インパクトの強い正統派の授業で(生徒が)力をつけている」。そううなる教師もいる。だが、伝統的な和訳中心の「教え込む」授業を続けてきた英語教師は、拒否反応が強い。

「これは、都立トップ水準の生徒だからできるのではないか」「日本語を介さずに英語を習得するのはいいが、大学受験を乗り切れるのか」

次々と出される否定的な意見に、布村はクビを振る。「もし『成績下位校』に行っても、日本語を介さない授業をするつもりです」

大学受験に関しては、布村も悩み抜いた時期があった。都立両国に赴任して3年目の2010年、初めて学年を担当した。その高1生は英語力が向上し、4技能(聞く、読む、話す、書く)の英語力判定テストの平均点は、上級生が高2の時に出した得点を上回った。それでも、ベテラン教師や生徒の保護者から、受験に対する不安の声が消えなかった。

2011年、大手予備校が噂を聞きつけて、布村の授業を視察した。そして、クビをかしげた。「こんな授業は初めて見た。リスニング力がつくから、長文問題には対応できそうだ。ただし、(大学入試で)結果が出るのかどうか判断できない」

結局、布村は高2までオールイングリッシュの授業を続け、高3で和訳を授業に取り入れる。その和訳も、グループで考えて発表させ、どの解答が優れているか議論する手法を取り入れた。

そして臨んだ大学受験で、都立両国は現役生の35.2%が国公立大学に合格するという驚異的な数字をたたき出す。都立高の進学指導重点校に指定されている日比谷や西を上回り、国公立受験で「都立トップ」の成績を収めた。

名門校への挑戦

布村は前任の都立国際高校でも、習熟度の高いクラスを担当した経験がある。そしてオールイングリッシュの授業を展開して、早稲田や上智といった私立大学上位校に多くの学生を進学させている。

そして2008年、都立両国への転任が決まる。

「伝統ある名門校だから、オールイングリッシュの授業なんて、許されないだろう」。そう諦めていた。ところが、思いがけない光景を目にすることになる。

都立両国高校の主な出身者(肩書は当時)
芥川龍之介(作家)、堀辰雄(作家)、石田衣良(作家)、半村良(作家)、立原道造(詩人)
小池昌代(詩人)、杉山寧(日本画家)、新田ユリ(指揮者)、浅沼稲次郎(日本社会党委員長)
鷲尾悦也(連合会長)、飯島延浩(山崎製パン社長)、大河内一男(東京大学総長)
郷通子(お茶の水女子大学学長)、松沢哲郎(京都大学霊長類研究所所長)
大塚範一(アナウンサー)、伊東一雄(野球解説者)
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英語劇で2度優勝