「蜩ノ記」小泉堯史監督に聞く 「全員が一点に集中」

その一方で黒澤さんもスタッフをよく見ていた。想像以上のものがでてくると喜んだ。だからスタッフは思い切り仕事ができた。

「雨あがる」で初めて監督した時も、スタッフがそうして支えてくれました。

(準備に時間をかけ、ワンシーンワンカットで撮るという)みんながなじんだリズムで撮れるのはうれしい。ただ黒澤さんのころのように恵まれた状況を作れないのは申し訳ない。

黒澤さんのすごさは、亡くなった後の方がくっきりしてきました。自分でやってみるほど実感できる。1カット1カットがすごい。

黒澤さんはすべてを映画に描きこんでいます。僕なんか映画にひかれたというより、黒澤さんにひかれたのだと思う。黒澤さんは全身映画なんです。

「俺は職人と呼ばれたいんだ」と黒澤さんはよくおっしゃっていました。自分の腕を磨きなさいということです。「監督になりたいのなら脚本を書け。本なら自分の家で書けるだろう」と。書いてもっていくと、丁寧に読んでくれました。

映画監督 小泉堯史氏

黒澤組のスタッフは職人的に口うるさい。ついていこうと思う人以外は、ついてこれない。それをよしと思って、ついてくる人がいるのはうれしい。「蜩ノ記」でも若い助監督は先輩の仕事をきちんと見て、自分のものにしようとしていた。

監督として5本作りました。黒澤さんに近づこうと思ってもなかなかそうはいきませんが、教えられたことが生かされる現場が作れればいいなと思います。

ただ映画で同じことは二度とない。カメラアングルもライティングも一回一回違う。黒澤さんはいち早くヘッドホンステレオを持っていた人だし、デジタル技術を使ってゴッホの絵の中に入る映画を撮った人です。フィルムからデジタルに変わっていく今の時代に、黒澤さんだったらどんなものを撮るだろうかということは考えています。

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