女性が活躍する会社、幹部登用に積極的な企業が躍進
2015年ランキング
日本経済新聞社と女性誌日経ウーマンの「女性が活躍する会社」ランキングは女性リーダー育成で成果をあげる資生堂が2年連続の1位となった。上位には女性幹部の育成・登用企業の躍進が目立つ。中でもここ3年で著しく順位を上げる3社の取り組みを紹介する。
ランキング上位企業の顔ぶれは、働く女性を取り巻く環境の変化とともに大きく変わってきた。
男女雇用機会均等法施行の2年後にあたる1988年に調査した1回目は小売りが上位11社中7社。女性が活躍できる制度も風土も十分整っていない中、百貨店やスーパーなど女性社員の数が多い企業が並んだ。
2006年は日本企業に先んじてダイバーシティー(多様性)を進めた外資系企業が1位と3位に。05年の次世代育成支援対策推進法施行を受け、両立支援やワークライフバランスを強化した電機業界の3社がトップ10入りした。
12年末に誕生した第2次安倍内閣が女性活躍推進を経済成長戦略の重要な柱と据えて以降は、女性リーダーの育成に力を注ぐ企業が増加。15年は小売り、事業所向けサービス、保険から各2社がトップ10入り。幅広い業界の企業が上位入りした。
15年の上位企業で目を引いたのが女性役員の育成・登用への取り組みの強化だ。上位10社中8社に生え抜きの役員がおり(1月1日現在)、4社に女性役員登用に関する数値目標がある。「女性課長職の育成が一定レベルに達した企業は、能力や適性のある女性をさらに上位職に就かせるための取り組みを、急ピッチで進めている」と審査員の一人で人材育成コンサルタントの河野真理子氏は指摘する。
ワークライフバランスへの取り組みは生産性向上に向けた業務効率化を進める企業が増えた。「月間残業時間の目標を定め、達成状況を評価項目とする」など、組織を挙げて働き方改革をする動きが広がった。回答企業全体の年間総労働時間は平均1990時間で前年より7時間減った。
(女性面副編集長 佐藤珠希)
2位 セブン&アイHD
昨年7位のセブン&アイ・ホールディングスは2位に。2012年7月に「ママ's コミュニティ」を始めた。妊娠中や育児中のグループ社員を対象に、2カ月に1度開く。昼休みに弁当を食べながら、家庭と仕事を両立する工夫の情報を交わす。
「プロジェクトを始めた頃は遠慮がちに育休から戻る女性が多かったが、今は復帰して歓迎されたと喜ぶ社員が多い。大きな進歩」とグループのダイバーシティ推進プロジェクトリーダーを務める藤本圭子さん(58)は強調する。
セブン&アイ・ホールディングスは16年2月時点での女性管理職比率を課長職以上で20%、係長職以上で30%と目標を掲げる。15年2月にはそれぞれ19.7%、22.3%に達した。女性管理職のコミュニティーも設立し、情報交換やスキル向上を支援する。
女性に限らずダイバーシティーを確保するため、昨年6月には管理職向けのセミナーを始めた。育児や介護など様々な事情を抱えながら働く部下をいかに調整し、成果をあげていくか。これまでに計5回開き、村田紀敏社長らトップをはじめ、のべ1400人以上が参加した。多様な人材を生かすため、上司の意識改革に切り込む。
8位 リクルートHD
昨年の12位から8位に順位を上げたリクルートホールディングスはグループで働き方改革を進める。業務で成果を出しても、長時間労働をしていると表彰対象から外す。傘下のリクルートマーケティングパートナーズ(東京・千代田)は2月から、会社以外での勤務を認める制度「リモートワーク」を試験的に始めた。育児の制約がある女性社員だけでなく、多様な働き方を可能にする取り組みだ。
約1200人の従業員のうち、対象の約150人は自宅などで作業できる。会議はインターネット電話「スカイプ」を活用する。「午後から社外で打ち合わせなので、午前中は自宅で仕事してから向かう」といった理由でOK。企画統括室の徳重浩介室長(32)は「通勤ラッシュにかかる時間をなくし、業務を効率化できる」と利点を挙げる。
空いた時間の活用法は子育てや社外のセミナー参加など。育休から復帰した女性社員は「子育て中だからと特別扱いされると気後れするが、皆がリモートワークをうまく使っているので精神的に楽」と話す。9月をメドにパートナーズ社全体でリモートワークを採用する。
(関優子)
4位 JTB
女性社員比率が約6割のJTBグループは昨年の18位から4位に。課長職向けメンター制度と営業職向けの研修を4年前に始め、女性社員のやる気を高める。女性役員比率目標(2016年に5%)は4月に4.6%とほぼ届き、国内会社の女性管理職比率は約35%と高い。メンター制度はグループ本社が主導して始め、14年に休止、再構築している。グループ170社に約1500人いる女性課長のうち29人が制度を利用した。
グループ会社の役員、男女1人ずつがメンターになり、仕事の悩みに助言する。首都圏の田中路子課長(45)は「業績不振や部下の育成に悩んでいたが、役員の経験を聞いて悩みが小さなものだと思えた」。グループ各社の女性課長との人脈もでき、1都3県の店舗戦略を練る。
労働時間の長さが課題で、出産などを機に転籍する女性が多かったのが営業職だ。経験5年以上向けの研修は子育てを経た先輩らと考えを共有し、「やる気がある女性に長く働いてもらう」(人事部)。課長職のメンターを務めたJTBパブリッシングの楓千里執行役員(59)は「経営感覚を持った女性中堅社員が増えている。後輩女性に自分の体験を引き継いでいくことが重要」と話す。
(横沢太郎)
【評価指標と測定項目】企業の女性活躍の取り組みを管理職登用度(女性役員の有無や人数、女性管理職比率など)、ワークライフバランス度(年間総労働時間、有給休暇取得率、育児休業取得率など)、女性活用度(女性活躍推進やダイバーシティ推進組織の有無、ハラスメント対策など)、男女均等度(女性社員比率、勤続年数など)の4分野で採点。合計点を偏差値換算し、総合ランキングを作成した。
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