掃除の達人に聞く 「汚れる前に一拭き」で心軽く生活評論家の沖幸子さん

仕事や育児に忙しく、家の掃除や片付けに手が回らない。後回しにするうちに手のつけようがなくなる家庭は少なくないようだ。家事代行会社フラオグルッペ(東京・渋谷)の社長で生活評論家の沖幸子さんも、かつては片付けに苦闘していた。その末に行き着いたのが頑張りすぎない「引き算」の発想。掃除のプロに時間をかけずに家をきれいに保つコツや心得を聞いた。
生活評論家の沖幸子(おき・さちこ)さん 兵庫県出身。神戸大卒、68歳。全日本空輸やライオンを経て1987年に家事代行会社フラオグルッペを創業。「毎日が輝く、ものと私の“いい関係”」(KADOKAWA)など著書多数。

――「掃除は引き算」とはどういうことですか。

「掃除や片付けは体力を使うし、時間がかかりますよね。やり始めると部屋の汚れや散らかったところがあれこれ目に付きます。でも、気づいたことをすべて足し算すると思う通りにはできなくなる。ならば手間や時間を省く引き算を優先しようという考え方です」

「私はもともと掃除が好きではありません。会社勤めをしていた当時は、いつも仕事に追われて掃除どころではなかった。一人ではどうにもならなくなって、やむなく女子学生のアルバイトに掃除をお願いしたこともあったくらいです」

――「引き算」を考え始めたきっかけは。

「勤め先を休職してドイツで暮らしたときのこと、きれい好きの大家さんに『部屋が汚い』と怒られたことです。彼女は『忙しさは家が汚い理由にならない。できなければ他人に任せるか、汚れる前にやれ』という。この汚れが目に見えないうちに拭いたり、掃いたりするという彼女の考え方が、私には大きな発見でした。働きながら家をきれいに保つ大変さは身にしみている。いろいろ工夫しましたが、彼女のやり方なら頑張りすぎる必要がない。無理しなくていいと思えるようになり、心も軽く、掃除と向き合えるようになりました」

――具体的にはどうすればいいのでしょう。

「私は家で4つのルールを守っています。まず、タオルやほうきなど、掃除道具を手の届くところに常備すること。次にそれらの道具で汚れが目立つ前に掃除することです。たとえば洗面台を使ったら飛び散った水を、お客様が帰ったらテーブルをタオルでさっと拭きます。使った時が手入れ時。放っておいて汚れが目立ってくれば、気合いを入れて掃除しなければなりません。数秒のことですが、何かのついでに拭いたり掃いたりすることを繰り返していくうちに習慣になり、そのうちやらないと落ち着かなくなりました」