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昼間の強い眠気、思わぬ病気が隠れているかも

2015/1/1

 日中、何らかの眠気を感じるのはよくあることだ。しかし、重要な会議の最中に寝てしまったり、車の運転中に居眠りをしたりするほどの強い眠気には注意が必要だ。睡眠不足だけでなく、思わぬ病気が隠れていることもある。日中の眠気の原因と対策、上手な睡眠の取り方について専門家に聞いた。

 昼食後、一息ついた午後に感じるような軽い眠気は、生理的なものだ。しかし、強い眠気が日常の社会生活に影響するほどなら「原因をつきとめて、治療や生活習慣の改善を図るようにすることだ」と睡眠総合ケアクリニック代々木(東京都渋谷区)院長の中村真樹さんは注意を促す。

 「いままでは主に不眠の悩みを訴える人が多かったが、最近は眠気についての訴えも増えている」とスリープ&ストレスクリニック(同品川区)院長の林田健一さん。

 日中に我慢できないほどの眠気を催す原因としては、まず、必要な睡眠時間が取れていないことがある。また、何らかの病気が睡眠の量や質に影響を及ぼしたり、起きていることそのものを難しくしたりするようなケースもあるという。

 睡眠時間に関しては、日本は先進国の中でも短い国の一つである。2009年の経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の平均睡眠時間は7時間50分で、最も長いフランスよりも、1時間ほど短かったとされる。日本人は睡眠が足りていない人が多いのかもしれない。

 睡眠量が少ない状態が続くと、睡眠障害の一つである睡眠不足症候群になることがある。日中に強い眠気や倦怠(けんたい)感などを引き起こす。

 睡眠不足症候群の人は、眠りが足りないという感覚に乏しいことが多いのだという。中村さんは「睡眠不足が続くと、本人はそれを自覚しづらくなるのが怖い」と指摘する。しっかり寝たら日中の眠気や疲労感が軽くなったというようなら、睡眠不足症候群の可能性がある。

 仕事や勉強などで平日に睡眠時間を十分確保できないようなとき、どうするか。「睡眠の足りない分、“睡眠負債”を休日に返済する方法もある」と中村さん。土日にいつもより1時間早く布団に入り、2時間遅く起きるようにする。ポイントは生活のリズムをうまく調整すること。いわゆる寝だめとは違う。

 自分が寝起きしなければならない時間にそれができず、社会活動に支障をきたすような昼の眠気につながる恐れがあるのが概日リズム睡眠障害だ。交代制の職場などによる不規則な生活が原因で自律神経が乱れ、頭痛や倦怠感、集中力の低下などが起こるとされる。

 睡眠の質を低下させる原因には、肥満などが原因で起きる睡眠時無呼吸症候群(SAS)や、むずむず脚症候群もある。SASは睡眠中に空気の通り道である上気道が閉塞するため断続的に無呼吸を繰り返す病気。むずむず脚症候群は足の不快感で睡眠が妨げられる。はっきりした原因はわかっていない。

 林田さんは「睡眠時間を確保しても、途中で睡眠が分断されて脳が十分休まらない。そのため昼間の眠気を引き起こす」と説明する。SASなどが疑われる場合は、医療機関で検査を受ける。

 日中、強い眠気に襲われて眠ってしまうナルコレプシーは、脳の病気の一つである。驚いたり喜んだり、興奮したりしたときに体の力が抜ける「情動脱力発作」を伴うなどの特徴が知られている。

 「日本人の発症率はおよそ600人に1人とされる。多くは10代で発症するので、何か心当たりがあれば早期に専門の医療機関を受診することが大切」と林田さんは説く。運転時などに発作が起こると事故の原因にもなる。脳内のオレキシンという覚醒維持に関連した物質の低下が病態に関係していることがわかってきたという。

 昼間に強い眠気を起こさないようにするうえでは、日ごろの生活で睡眠の質を高めることにも気を配りたい。たとえば、夕食前に適度な運動で体温を上げておくと、就寝時間に向けて徐々に体温が下がりスムーズに眠りに入れるだろう。

 就寝する前には、脳を興奮させるようなパソコン作業、ゲームなどは避けるのが望ましい。覚醒を促すからだ。リラックスできる音楽を聴いたり、趣味の本を読んだりするのがおすすめだ。

 年末年始の休日はゆったり過ごして、たまった睡眠負債を返すのに役立てたい。

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■肥満や血圧などに影響も

 睡眠不足が続いたときの「損失」は小さくない。スリープ&ストレスクリニックの林田さんは「健康な若者に5時間睡眠を続けてもらった海外の研究では、7日目には作業のエラーの数が5時間睡眠を始める前の約7倍に増えた」と説明する。

 今年3月に厚生労働省が11年ぶりに改定した「健康づくりのための睡眠指針」によれば、いくつかの研究で短い睡眠時間や不眠が肥満や高血圧を引き起こす危険性が示されているとしている。

 必要な睡眠時間には個人差があるが、成人してからは少しずつ短くなる傾向にある。昼間に過剰な眠気のないことも、適切な睡眠がとれているかの目安になりそうだ。

(ライター 武田 京子)

[日経プラスワン2014年12月27日付]

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