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 亭主元気で留守がいい――。この言葉が世の夫たちに問いかけるのは、実は老後の過ごし方なのかもしれない。定年後は「濡れ落ち葉」などと妻から厄介者扱いされることもあるだけに、円満さを保つ努力が欠かせない。家事を分担したり、できるだけ家以外の居場所を作ったり。老後に男を上げるため、夫たちに必要な心得を考えた。

「毎日午前10時から午後2時ぐらいまでは外出する。妻が昼食の支度をしなくて済むからね」。夫が話すと妻もにっこり「四六時中、家にいてほしくない」と言い切った。

大阪市内に住む河南(かんなん)昌宏さん(62)と、妻の厚子さん(56)。円満な関係の秘訣は、昌宏さんが2年前にビルの保守・点検会社を定年退職して以来続ける生活スタイルにある。ポイントは昼食は別々に取るということだ。

例えば9月のある日、昌宏さんは朝食をすませると、午前10時に電車で1時間ほどの大学に向かった。そこで昼食をとり、その後公開講座を受講。午後3時半に帰宅した。外出時間は5時間30分。「ほどほどの外出が高血圧で糖尿病を患う私にはちょうどいい」という。

定年後の生活で、厚子さんが何より恐れていたのは、夫婦で昼を過ごすことだった。昌宏さんの現役当時は、友人と出かけたり、趣味を楽しんだりする時間だった。それが夫の世話で奪われるのはたまらないというわけだ。

そこで昌宏さんは定年と同時に外出を励行。最近は自らサンドイッチを作って出かけることもある。「料理を覚え、妻の大変さがようやくわかった」。厚子さんも「上から目線がなくなった」と夫の変化を、心から喜んでいる。

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仕事一筋だった男性には定年後、家でゴロゴロ過ごすようになる人が少なくない。家事を手伝うこともなく、家にいる姿に妻は戸惑い、やがて心に負担を感じ始める。「昼食の世話はその典型」と、大阪市で主に更年期障害の患者の診療をしている、医師の石蔵文信さんは指摘する。

熟年夫婦のカウンセリングを長年手掛けてきた経験から「定年後、夫は昼食を外でとるか、自分で作ってほしい。そうでないと本当に奥さんから見捨てられます」と男性シニアに発破をかける。そして、やはり自ら料理をすることが効果的とみる。

石蔵さんが各地で開く「超初心者向け男の料理教室」を訪ねると、確かにその効果も見て取れた。

9月初旬に大阪府吹田市で開いた講座のメニューは中華風の鍋物。野菜と肉を適当に切って、水の入った土鍋に放り込み、沸騰したらラーメンスープのもとを入れるだけの簡単なメニュー。だが、参加する夫たちは必死だ。

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