ウイスキー、琥珀色に隠れた物語を知る
味と香り、蒸留所の個性
「今日は6種類のウイスキーを飲み比べします。どれもカティサークというブランドで、この名前はスコットランドの人には特別な響きがあります」。東京・西麻布のマンションの一室に、ウイスキーの香りが広がった。スコッチ文化研究所(東京都港区)が主催するウイスキースクールだ。
代表の土屋守さんがうんちくを語ると、参加者は熱心にノートを取る。森麻美子さん(39)はウイスキーと出合って2年。「同じウイスキーなのに味や香りが全然違うのに驚いた」。別の講座も含め、月3回、同研究所に通っている。
ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝と妻リタをモデルにしたNHK連続テレビ小説「マッサン」が始まり、ウイスキー人気が高まっている。ニッカウヰスキーの親会社、アサヒビールマーケティング本部の箕輪陽一郎さんによると「セミナーでは若い女性の姿が目立って増えてきた」という。
ウイスキーは焼酎やブランデーなどと同じく、蒸留酒に分類される。大麦などの原料を発酵させて造った醸造酒を加熱してアルコールと香りを取り出し、水を加えてたるで長期間寝かせる。熟成によって琥珀色に色づき、深い香りが生まれる。アルコール度数が高いのも特徴だ。
一口にウイスキーといってもたくさんある。「まずチェックするのはモルトウイスキーとブレンデッドウイスキー。それぞれ特徴が違う」(箕輪さん)
前者は大麦麦芽を原料としたもの。国によって基準が異なるが、日本やスコットランドでは100%大麦麦芽が原則だ。モルトウイスキーの中でも1つの蒸留所の原酒のみを使ったのがシングルモルトと呼ばれ、味や香りが際立っている。ニッカの「余市」、サントリーの「山崎」など蒸留所の名前が付くことが多い。
後者はトウモロコシなどからできるグレーンウイスキーとモルトウイスキーをブレンドしたもの。「飲みやすくマイルドな味」(箕輪さん)だ。ニッカの「ブラックニッカ」、サントリーの「角瓶」などのほか、外国産では「カティサーク」「ジョニーウォーカー」「バランタイン」「オールドパー」などがある。
国産ウイスキーは世界で評価を高めている。ニッカとサントリーは今年、ともに世界的な賞を受賞した。「ウイスキーは蒸留所の歴史や熟成にかかる年月など時間を楽しむもの。背後にある物語も味わってほしい」(箕輪さん)
簡単カクテル、自宅でも
ウイスキー人気を引っ張るのがハイボールだ。ホテル日航東京のメーンバー「キャプテンズバー」のバーテンダー、安井究さんに作り方のコツを聞いた。
ポイントは2つ。まずはウイスキーと氷を入れた状態で30秒ほど混ぜる。「こうすることで味わいや香りがより引き立つ」。ウイスキーの温度を下げ、炭酸水を入れたときに炭酸が抜けにくくする意味もある。
もうひとつが炭酸水の入れ方。氷に直接触れると炭酸が抜けてしまう。「縁からゆっくり注ぐといい」
カクテルにも向く。自宅で手軽にできるのがミントの葉と砂糖を加え水や炭酸で割った「ミントジュレップ」。ホテル日航東京の安井さんは「カボチャや栗とも合う」と話す。アサヒビールの箕輪さんによると、このほか牛乳や生クリーム割りもあるという。コーヒーに生クリームと加えるとアイリッシュコーヒーだ。
カクテルではないが、箕輪さんのおすすめが「ストレートで飲んだ後、しばらくしてからグラスのにおいをかぐこと」。強いアルコールに邪魔されず、ウイスキーの持つ香りが前面に出てくる。セミナーでは好評だという。
(河尻定)
[日経プラスワン2014年11月22日付]
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