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岡本かの子 浮世離れした夫婦像

ヒロインは強し(木内昇)

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NIKKEI STYLE

夫婦共働きの世帯が増え、なにかと問題に挙がるのが家事・育児の分担だ。会社での仕事分担と道理は同じでも複雑さをはらむのは、ここに男女の性差がからむため。男は外で働き、女は家事をする、という古くからの観念だ。

とはいえ、妻が夫にかしずき仕えるのは主に武家であって、江戸の頃でも町人たちはニュートラルだった。夫婦で家業を切り盛りする家も多かったから、ご飯を炊くのも子供らを銭湯に連れて行くのも夫の役目、なんてことはけっして珍しくなかった。

男子厨房に入らず、のスタイルが広く流布して久しい今、夫の家事参加はあくまで「手伝う」意識を脱しないのが不満、という女性も多い。一方で男性は掃除や洗濯を担いながら、いざとなると大黒柱的男らしさを求められたりして、負担増な感もある。

歌人、小説家として類い希な才能を開花させた岡本かの子は、独特な夫婦像を築いた人でもある。兄の影響で文学に傾倒し、十七歳にして与謝野鉄幹主宰の「明星」に短歌を掲載。早くから歌人として頭角を現した彼女に熱烈な求婚をしたのが、東京美術学校生の岡本一平だった。大変な美男子で、かの子もその美しさに惹かれたという。明治四十三(一九一〇)年、ふたりは結婚、翌年には息子・太郎も生まれた。が、生活は厳しく、一平は帝劇で背景を描く仕事で口を糊し、かの子も質屋通いが習慣となる。

ところが二年後、夏目漱石の新聞連載「それから」の挿絵仕事が一平に舞い込むと、これが高評を得、暮らしは一変。一躍人気画家になった彼は創作に励む一方で、派手に遊ぶようにもなった。二晩も三晩も帰らぬ夫を、かの子は食事もとらず待ったという。

時を同じくして、兄の死や実家の破産が重なり、かの子の神経は衰弱、入院を余儀なくされる。退院後、一平も家庭を顧みるようになり平穏が戻るかに思われた。が、今度はかの子が堀切という早稲田の学生と恋に落ちてしまうのだ。ついに離縁となりそうだが、意外や彼女は堀切を家に住まわせ、夫も含めた共同生活を始める。

一平がそれを許したのは、妻への償いからとも、江戸っ子の気っ風のよさゆえとも言われる。またかの子も、夫への当てつけといった稚拙な感情ではなく、自らの希求に従った結果だったのかもしれない。この生活をモチーフにした小説「やがて五月に」の崇高さからそれは感じられるし、堀切が去って七年後、医師と恋仲になり、またもや自宅に住まわせたのも純粋な欲求の表れに思える。浮世離れした夫婦の在り方だが、かの子は死ぬまでふたりの男性に見守られ、充実した創作を続けたのだ。

一平、かの子の例は飛躍しすぎにしても、夫婦の在り方は家庭ごとに違うものなのだろう。家事分担も含め、ふさわしい形を追求するのが夫婦道とすれば一長一短ではいかぬのもむべなるかな。世の統計や他家との比較、時代性にのみ囚われると案外大事なものを見失うのかもしれない。

[日本経済新聞朝刊女性面2014年8月16日付]

木内 昇(きうち・のぼり) 67年東京生まれ。作家。著書に「茗荷谷の猫」「漂砂のうたう」(直木賞)「笑い三年、泣き三月。」「ある男」など。

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