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五輪後は「都心回帰」見据えよ 臨海部、交通がネック 市川宏雄・明治大専任教授に都政の課題を聞く

2017/7/7 日本経済新聞 朝刊

臨海部は「ゆりかもめ」を除くと交通体系がほとんどない

7月2日に投開票された東京都議選では、小池百合子知事の率いる地域政党「都民ファーストの会」が大勝した。安定した政権基盤をバックに、小池知事は2020年東京五輪・パラリンピックに向けた都市づくりを進めることになる。都市政策が専門の市川宏雄・明治大学専任教授に今後の課題を聞いた。

「臨海部の開発は都が主導すべきだ」と話す市川宏雄・明治大専任教授

――小池都政の街づくりをどう評価しますか。

「五輪・パラリンピックまで3年しかないが、街づくりは由々しき状況だ。(選手村がある臨海部と都心部を結ぶ幹線道路の)環状2号は五輪・パラリンピックまでに開通させないと大変。最優先事項のはずだが、間に合うかどうか瀬戸際だ。都市づくりを前提に都政をやっていないことが分かる」

――五輪・パラリンピックを目標にした民間プロジェクトは都内各地で進んでいます。

「銀座、日本橋、六本木などエリアごとに民間デベロッパーが頑張っている。民間主導で行政が容積率緩和という伝家の宝刀を抜いて支援する良いパターンだ。五輪・パラリンピックまではそれをスムーズに行うことが東京の課題だ」

――五輪・パラリンピック後の街づくりにはどういう視点が必要になりますか。

「大きなポイントは都心回帰だ。都心の居住環境が向上し、郊外より生活しやすいことを人々は知っている。都心回帰は今後も進む。都は人口減ばかり議論せず、都心で人口があと100万人増えたらどうするかという議論をすべきだ」

――ロンドンは12年の五輪・パラリンピックで東部地区の開発が進みました。

「都は五輪・パラリンピックで使う臨海部をどうするか考えるべきだ。臨海部は巨大だが、(新交通)ゆりかもめを除いて交通体系がほとんどない。臨海部で都市活動が始まったら、域内交通をどうするかという議論が必要だ」

「1995年に青島幸男知事が登場し、臨海部で96年に予定していた世界都市博覧会が中止された。あの時に都市博をやっていれば、今の臨海部とは違っていただろう。都心の開発を主導するのは三菱地所や三井不動産、森ビルなど民間だが、臨海部の開発を主導するのは都だ。都が議論しない限り、臨海部はよみがえらない」

――多摩地域など郊外では人口減が加速します。

「これは深刻なテーマだが、行政はお手上げ状態だ。かつては鈴木俊一知事が多摩に手を差し伸べた。(八王子や立川を核に都市機能を強化する)『多摩の心(しん)』を掲げ、モノレールも通した。(都の人口が頭打ちになる)25年以降、郊外は放っておくとスカスカになる」

「(近代都市計画の祖とされる)英国のハワードは『都市と農村の結婚』という田園都市構想を提唱した。ハワードの構想では郊外の家は広くて立派な庭がある。郊外はアパートではなく、一戸建てをつくるべきだ。人口が半分になったら、家(の広さ)を倍にすればいい。郊外は本来の田園都市に変えるべきだ」

(聞き手は安部大至)

[日本経済新聞朝刊2017年6月30日付を再構成]

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