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川崎、輝く工場夜景「逆転の発想」で芸術謳歌 「当世」東海道繁盛記(5)

2014/12/1

 かつて公害の街と言われた川崎だが、今いちばん有名なのは川崎港の工場地帯が作り出す美しい夜景だろう。

屋形船の夜景ツアーは工場や船舶が眼前に迫り、大迫力だ

 「すてき!」。カップルが歓声を上げる。「川崎工場夜景 屋形船クルーズ」のひとこまだ。川崎市夜光町の発着場所から臨海部の運河を通り、東亜石油や川崎天然ガス発電所、昭和電工、JX日鉱日石エネルギーといった企業の発電所や工場を見て回る。石油化学コンビナートの工場群や停泊中のタンカーの壮大な明かりが次々と眼前に迫る。

炎の煙突

フレアスタック(煙突の炎)は工場夜景の白眉(夜間のミステリーバスツアーで)

 なかでも白眉は東燃ゼネラル石油の「フレアスタック(煙突の炎)」だ。煙突から出る煙を無害化するために燃やしているわけだが、海面に映る炎の揺らぎが何ともロマンチックだ。デッキの上の誰もがうっとりと見つめる。

 2011年に本格的に始まった工場夜景ツアーは現在、旅行会社が船とバスで毎週2、3回実施。毎回、予約が殺到し、これまで満席にならなかったことは一度もない。灰色の街のイメージを植え付けた臨海部の工場群を観光資源にするという逆転の発想だ。

 「川崎はもはや公害の街ではない。観光、文化の街として生まれ変わった」。川崎市の伊藤和良・経済労働局長は力を込める。

 「産業観光の推進」を市政の重要課題に掲げた阿部孝夫・前川崎市長の号令で、市が初めて催した夜の工場ツアーには45人の募集枠に800人近くが殺到。受付の市商業観光課は電話が鳴りやまない日々が続いた。

 「工場が観光資源になるとは夢にも思わなかった」(伊藤氏)のが正直なところだが、今や工場夜景ツアーは全国に広がり、北海道室蘭市などと組んで「全国工場夜景サミット」も開かれている。サミットにはこの他、三重県四日市市、兵庫県尼崎市、山口県周南市、北九州市も参加、15年には静岡県富士市も加わる見通しだ。

 仕掛け人の亀山安之・川崎市観光協会観光推進部長は全日空出身で観光ビジネスの経験が豊富。工場夜景ツアーが成功する3条件として、(1)官民一体で推進(2)第三者による客観的な評価(3)海陸双方からアクセスでき通年参加が可能――を掲げる。川崎市は写真コンテストを定期的に催すなど高い評価を維持する工夫を凝らしている。

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