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東北・フルーツ王国 驚きの甘さ育む昼夜の温度差 東北果物紀行

2014/9/1

珍しいキイチゴも

秋田県中央部にある五城目町の田園地帯では、間もなく特産品のキイチゴの収穫作業が最盛期を迎える。

キイチゴの栽培は手作業で行う(秋田県立大学フィールド教育研究センター)

「実がつぶれないよう宝物を扱うように丁寧に収穫しています」と話すのは同町でキイチゴ栽培を手掛ける17農家の一人、佐々木雄幸さん。収穫は赤い実を一つ一つはさみを使って切り取る手作業。収穫できるのは1日で1人10キロほどだ。

約10ヘクタールの農地で主に米作を手掛ける佐々木さんは、転作作物の一つとして米の育苗用ハウスを使ってキイチゴを栽培する。「キイチゴが雨にぬれ、カビが生えてダメにしたこともある」と苦労を語る。今秋からは専用のハウス5棟を新たに建てる計画を練っている。

キイチゴは古くから各地で自生しているが、欧米で栽培用に品種改良されたラズベリーやブラックベリーなどが知られる。国内での商業的栽培はわずかで、国内市場の流通量の1%程度とされる。

秋田県で栽培されるようになったのは、キイチゴの果樹栽培を研究してきた秋田県立大学の今西弘幸准教授らが2007年に呼びかけたのがきっかけ。08年から五城目町と大学の共同研究として栽培に着手した。

生産農家や菓子店などで「五城目町キイチゴ研究会」を設立し、翌年には販売を始めた。価格は大学側が輸入品と比較した結果、生食用は1キロ4000円、冷凍品は1キロ2000円(いずれも税抜き)と設定した。

研究会の副会長を務める佐々木さんは「コメの価格が下がって農家の生活は苦しくなっている。特産品としてのキイチゴには、副収入としての期待も高い」という。

五城目町ではもなかやブッセなどの商品が販売されている

地元では特産品としての定着を目指す菓子店が、もなか、ブッセ、アイスクリームなどを開発。清酒「高清水」で知られる秋田酒類製造(秋田市)はキイチゴを使ったリキュールを発売している。

キイチゴのタルトを夏秋限定で販売しているケーキ店「パティスリー・パルテール」(潟上市)では「酸味の強いキイチゴは、生クリームの甘みと合い好評」という。研究会は今年1月、岩手県の酒造会社にリキュール用として150キロを出荷。知名度も徐々に上がり始めている。

県内では大館市にも10年に研究会ができたほか、仙北市の農園や横手市にも栽培の動きは広がる。今西准教授によると、北海道と長野県に大きな農園があるが、国内に大規模なキイチゴ産地はないという。

同准教授は「圧倒的に輸入品が占める市場だが、国産品を求める需要はある。手作業が多いので一気に生産拡大できないが、地道な拡大で一大産地に成長できる可能性がある」と話す。日本一の産地づくりへ夢は続く。

(高橋敬治、中丸亮夫、曽我真粧巳)

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