オリパラ

オリパラSelect

五輪キャンプに意外な縁 パラオやガーナが選んだ町は 252自治体がホストタウン名乗り、訪日客誘致や人材育成狙う

2017/8/4 日本経済新聞 朝刊

松戸市がマラソン大会にルーマニアのマラソン・競歩選手を招待したことがキャンプ受け入れのきっかけとなった。写真は本郷谷健次市長(右)とタティアナ・ヨシペル駐日ルーマニア大使(同市提供)

2020年東京五輪・パラリンピックに向け、全国各地で準備が熱気を帯びてきた。キャンプ地の誘致などを通じて各国選手団との交流を進める「ホストタウン」制度には252自治体が登録。アスリートとの交流や外国人も利用しやすい施設の整備を通じて、訪日客の誘致や国際人材の育成につなげる。

1000人規模の選手団を送り込む米国が主要なキャンプ地に選んだのは東京都世田谷区。選手団のうち、選手やコーチら400~600人程度が滞在する。月内に米国オリンピック委員会のスタッフが来日して練習施設を視察。9月には施設の使用料などを取り決める契約を結ぶ予定だ。

世田谷区はトレーニング施設として区立大蔵運動公園にある陸上競技場を約17億円を投じて全面改築する。約1800人分の屋根付き観客席や外国人や障害者も使いやすいトイレも整備する。

千葉県松戸市はルーマニアの陸上競技などの事前キャンプを受け入れる。昨年1月に市内のマラソン大会にルーマニアのマラソン選手と競歩選手を招待。「市民の声援やマラソン大会の会場だった陸上競技場の緑豊かな環境を気に入ってくれた」(同市)ことがきっかけという。今年1月のマラソン大会にもルーマニアの選手を招くなど、市民との交流を深めている。

五輪を機に経済的な連携を強めようとするのがメキシコのキャンプ地に決まった広島県だ。マツダが進出するなど経済界のパイプを生かし、5月に基本協定を結んだ。26競技の選手団を受け入れる計画で、約300人が20日間滞在すれば、1億3千万円の経済効果があると試算している。

広島県はマツダの工場があるメキシコ・グアナファト州と経済交流の覚書を締結、メキシコに進出する県内の自動車関連企業は数十社に上るという。「五輪を機に経済的結びつきを強化したい」と県の担当者は話す。

宮城県蔵王町には戦後、パラオからの引き揚げ者らが入植。パラオで戦没者を慰霊した天皇・皇后両陛下が同町を訪問したことが、パラオのキャンプ招致の契機になった

五輪熱は小規模の町村にも広がる。太平洋の島国パラオは宮城県蔵王町をキャンプ地にした。同町では戦後、パラオから引き揚げた人々が入植地を北のパラオという意味で「北原尾(きたはらお)」と名付けるなど歴史的な縁がある。

パラオで戦没者を慰霊した天皇、皇后両陛下が15年に蔵王町を訪問したのが契機になった。選手団は陸上や競泳など8人程度で同町でも対応できる。早ければ18年にも強化合宿を開く計画だ。

西アフリカのガーナは福島県猪苗代町で事前キャンプを開く方向だ。同町で生まれた野口英世博士は、黄熱病の研究中にガーナで命を落とした。その縁で双方の高校生を中心に20年以上交流が続いており、同町から事前キャンプを持ちかけた。選手団は陸上、ボクシングなど15人程度の見通し。五輪が終わった後も、同町はスポーツイベントに選手を招待するなど交流を深めていく考えだ。

政府は合宿誘致や交流事業の費用で各自治体を支援する。既に179件、252自治体が登録、74の国・地域と交流を計画する。丸川珠代五輪相は「まだ多くの国がキャンプ地を探す可能性がある」とみる。五輪を地域のグローバル化にどう生かすか、各地が知恵を競う機会になっている。

[日本経済新聞2017年7月23日付朝刊に加筆して再構成]

オリパラ 新着記事

ALL CHANNEL