知られざる「うどんの国」、埼玉を行く

川島町は江戸時代、川越藩の蔵米の産地で、米の裏作として小麦を栽培していた。埼玉は今も昔も全国有数の麦産地で、小麦粉を使った食物が好まれる「朝まんじゅうに昼うどん」という言葉が伝わるほど、麦の食文化が根ざしている。

県によると、埼玉の10年産の麦生産量は全国6位。主な小麦の作付け地域は熊谷市や加須市、鴻巣市など県北部が並ぶ。生産される小麦は約9割が、麺づくりに向いているとされる「農林61号」という品種だ。

冠婚葬祭には欠かせない

川島町と同様、県北部で独自のうどん文化を培ってきたのが加須市。江戸時代から続くうどん文化を次世代に引き継ぐため昨年、6月25日を「うどんの日」に定める条例を制定した。

条例制定のきっかけは、市職員の提案だった。著名な観光名所が無く、「加須(かぞ)」という市名を「かす」と間違って読まれてしまうなど、知名度の低さが同市を長年悩ませてきた。

麺の幅が5センチ以上の「川幅うどん」(埼玉県鴻巣市)

若手職員が地域活性化策を考えるうちに、地域に伝わるうどん食文化に着目した条例アイデアが浮かび上がった。発案者である市職員、武井由加里さんは「継続性があってインパクトがあるものにしたかった」と話す。

加須市のうどんの特徴は、なんといっても手打ち麺だ。市内に40~50店舗の手打ちのうどん店が存在するだけでなく、市内の一般家庭でも冠婚葬祭の日に手打ちうどんを打つ風習が今も残る。白くつるつるとしたうどんは来客をもてなすハレの日のごちそうなのだ。

「うどんの日」制定を記念し、今年6月22日にプロ・アマ問わずうどんを振る舞うイベント「加須市うどんフェスティバル」を開催、1000食分を販売した。冬にはうどんレシピを競うイベントを実施し、優秀作は実際にうどん店のお品書きに登場させる計画だ。

埼玉は河川面積の割合が47都道府県で一番大きい。国土交通省は08年、埼玉県鴻巣市と吉見町の間を流れる荒川の川幅が国内で最も広いことを確認した。河川敷や堤防を含めた川幅は2537メートル。川幅日本一の部分を通る御成橋のたもとには「川幅日本一の標」も立つ。