「多摩の商都」立川、「空の街」の記憶も中央線繁盛記(4)

立川は多摩地区で最も乗車人員の多い駅だ。1日の乗車人員は16万人。青梅線や南武線、多摩都市モノレールが乗り入れ、高島屋や伊勢丹、ルミネなど様々な商業施設が立ち並ぶ。

立川駅は多摩地区にある中央線の駅で最も利用客が多い

「濃さ」を追求

なかでも立川育ちの老舗といえば、駅北側にある「フロム中武」だ。1962年に中武デパートとして開業。特徴はアニメやフィギュア、エレキギターなどの専門店が並ぶ「濃さ」にある。

立川育ちの老舗商業施設、フロム中武

最上階にある「ボークス立川ショールーム」は模型やアニメ登場人物のフィギュアが主力商品で、多摩地区のマニアには知られた存在。もう一つの名物が自社商品の本格的な航空機模型「スーパーウイングシリーズ」だ。5000円から1万7000円程度とプラモデルにしては高価だが、実際の機体に忠実なつくりで人気がある。

「他の店舗にはない模型が多いのが魅力」

ショーウインドーを熱心に眺めていたのは、81歳の福岡宏一さん。長く自衛隊に勤め、第2次大戦中の航空機の模型作りが趣味だという。星野茂久店長は「こだわりをもったお客様が多い」と話す。

昨春のイケア立川開業日には長い行列ができた

フロム中武は大規模改装のため5月から来春まで休業するが、改装後も模型やフィギュアなどのサブカルチャー売り場で2フロアを固める方針だ。運営会社の浪江崇等営業部長は「他の施設と同じような店舗ばかりでは、競争力が生まれない」と強調する。

改装は、耐震強度を強めることと、近隣の競合店対策が目的だ。JR立川駅からは2キロ弱、多摩都市モノレール立飛駅前のゴルフ練習場跡地には、大型ショッピングセンター「ららぽーと立川立飛」が、年内の開業を目指し建設中。周辺には家具や雑貨を販売する大型店舗「イケア立川」が昨春に開業し、週末ともなれば家族連れで大にぎわいを見せる。

一帯には空き地も目立つが、市は地区計画で住宅建設を認めていないため、いずれ新たな集客施設ができる見通しだ。

その西隣には東京ドーム40個分の広さを誇る「国営昭和記念公園」がある。1983年に開園し、立川市と東隣の昭島市にまたがっている。2014年度の入場者数は2月末で426万人と、13年度に記録した過去最高の約380万人を既に抜いた。

入場者数が増えているのは民間の知恵を生かしていることも一因。国は12年度から運営を西武グループに委託、様々な集客策を打ち出している。

冬季限定で開業しているのが「かき小屋」だ。大人90分間3480円でカキが食べ放題となる。昨シーズンは3カ月で1万5000人が利用した。

起爆剤は基地返還

昭和記念公園は食のイベントを企画し入場者数を増やした

駅北側に大型商業施設や広大な公園があるのは、当時の陸軍が建設した飛行場があったため。東京都小平市や埼玉県川越市も候補地だったが、中央線が通って交通の便がよい立川が選ばれた。飛行場は1922年に完成し、33年に現在の羽田空港に路線が移るまでは民間機も利用した。

終戦と同時に基地と周辺の航空機工場は米軍に接収されたが、77年に460ヘクタールもの土地が全面返還された。

35年に生まれ、立川駅周辺の大地主として地域の移り変わりを眺めてきた岩崎泉さんは「米軍基地返還が立川発展の原動力となった」と振り返る。広大な跡地を有効活用して「変化して発展する商業都市になった」。

駅の北側では、総事業費240億円を投じた立川初のタワーマンションの建設も進んでいる。2012年に閉店した旧第一デパート跡地の再開発だ。第一デパートは鉄道関連書をそろえた書店やフィギュアの専門店が入り、フロム中武と並ぶ「サブカルの立川」のシンボルだった。

32階建てで低層階には商業施設が入り、1億円を超える住宅もできる。完成は来年を予定する。再開発組合の清水哲男理事長は「高さ130メートルのビルは立川では最初で最後ではないか。ランドマーク的な存在になる」と胸を張る。

「押し入れ」で漫画ざんまい

休日の「立川まんがぱーく」は多くの子どもたちで混雑する

一方、駅の南側には古い街並みや個人経営の商店が目立つ。

最近、人気なのが旧市役所を改修して13年に開業した「立川まんがぱーく」。漫画を中心に雑誌などを含め約4万冊あり、自由に閲覧できる。再入場が可能なので、入場料大人400円、子供200円を払えば1日中楽しめる。

特徴は敷き詰めた畳と木材で造った「押し入れ」だ。押し入れで漫画を読んでいた子供の頃を思い出すのだろうか、20歳前後の若者が中に入って夢中で漫画を読む。

指定管理会社の福士真人さんは「あまりに人気なので押し入れを大幅に増やしたが、それでも土曜休日は押し入れを確保するために開館前に行列ができる」と話す。

市内でとれた農産物を中心に、タマネギやトマトなどの野菜や果物が並ぶ「のーかる」も、駅南側の新名所。商店主らが設立したまちづくり会社が昨年3月に開業した。

1日に2回、市内の農家を回って集荷する。買い取り制なので農家は返品を心配せずに生産できる。

1日あたりの来客数は150~200人。目標とする売上高にはまだ届かないが、固定客は増えつつあるという。岩下光明社長は「最近は農家に売れ筋の作物を生産するように依頼できるようになった」と顔をほころばせる。海外の高級紅茶と立川でとれたキウイやブルーベリーのドライフルーツをセットにした商品を考案中だと教えてくれた。(友山宏済)

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