根付くか欧米流ロングステイ ハイアットが新型ホテルまず金沢に20年開業 市長「大きな宿題」

金沢駅前に開業する複合施設の外観イメージ。「ハイアットハウス」は右側の棟に入る
金沢駅前に開業する複合施設の外観イメージ。「ハイアットハウス」は右側の棟に入る

米高級ホテルチェーン大手のハイアット・ホテルズは日本で長期滞在型ホテル「ハイアットハウス」の運営を始める。2020年6月に金沢市に第1弾を開業する。欧米では1カ所に1週間近くとどまりながらゆったりと過ごす旅行スタイルが根付いており、日本でも訪日外国人が増えるにしたがってそうしたニーズが出てくると判断した。短期滞在が中心だった日本の観光地が変われるかどうかの試金石となりそうだ。

ハイアットハウスは12年に生まれた同グループの新ブランド。17年6月20日時点で世界に78ホテルを運営し、同年内にさらに11ホテル増える予定。平均の宿泊日数は5~7泊という。日本では今回が初めての開業となる。

名称は「ハイアットハウス金沢」。客室数は約90室で、部屋の広さは平均40平方メートル台。それぞれキッチン、ランドリーや電化製品を備える。宿泊者は市場で買ってきた食材を、自分で調理して食べられる。ハイアット日本法人の阿部博秀代表は7日の記者会見で「自宅のように快適に過ごせる施設をめざしたい」と語った。平均客室単価は1泊2万5000円以上、稼働率は8割以上をめざす。

金沢市は金沢駅前の市有地に外資系ホテルを誘致するため事業者を公募していた。このほどオリックスを選定し、同社が主導する形で2棟からなる複合施設を建設することになった。

1棟にはハイアットハウスと分譲マンション、もう1棟には同じハイアットグループのフルサービス型ホテル「ハイアットセントリック」が入る。セントリックの客室数は約250室の予定で、レストランやバー、会議室もある。両方のホテルの運営はハイアットに委託する。低層階には商業施設を入れ、2棟をつなぐ3階部分には宿泊者や地元住民が利用できる庭園も造る。複合施設の総投資額は200億円程度を想定している。

金沢市は北陸新幹線の開業効果で観光客が急増している。近年は海外メディアの露出などで訪日外国人の注目が集まり、ホテルの進出が相次ぐ。20年の東京五輪・パラリンピックをきっかけに訪日外国人は一段と増える見通しで、同市の山野之義市長は「ハイアットのネットワークで世界の富裕層に来てもらいたい」と新たな需要の開拓に期待を寄せた。

ただ日本で初めてとなるハイアットハウスの開業は、長期滞在する旅行客のニーズに応えられるかという課題を地元の金沢市に突きつける。

欧米では1カ所に長くとどまりながら、日帰り旅行を組み合わせてゆったり過ごす休暇スタイルが定着している。それに対し日本人旅行者は短い休みが中心で、国内のほとんどの観光地はそれに合わせた受け入れ体制になっている。

オリックスの深谷敏成不動産事業本部長は「金沢市では2~3泊の需要が多いと聞いているが、それは(長期滞在に適した)施設がないから」と説明。周辺観光地を巡る拠点とすることで、「長期滞在のマーケットを創造する機会は十分ある」と自信を見せた。

一方、ホテル誘致で市の審査委員会の委員を務めた東洋大学の矢ケ崎紀子准教授は、目が肥えた海外富裕層を満足させるには「通り一遍の観光プログラムや説明では通用しない。企画力のブラッシュアップなどが重要」と指摘。「『富裕層』の中でもどんな層を狙うのか具体的に分析して対応すべきだ」と話す。地域経済学に詳しい金沢大学の佐無田光教授は「ハイアットができて満足するのではなく、これを機会に(市や地場企業が)どういう戦略で人を呼び込むのか、主体性が問われる」と語る。

海外富裕層向けホテルを誘致した金沢市は今後、官民を挙げた観光施策に取り組む必要がある。山野市長は7日の記者会見で「民間とも研修のようなことをしなければいけない」と述べ、「大きな宿題」と繰り返した。

(清水孝輔、中谷庄吾)

[日本経済新聞2017年6月7日電子版と8日付朝刊を再構成]