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「天然物と遜色なく」 養殖魚、新ブランド続々

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NIKKEI STYLE

養殖魚のブランド新設が相次いでいる。佐賀県と九州大学は地元旅館向けに人工的に育てた魚から採卵、育成した完全養殖のマサバを「サバ活」と称して提供を開始した。愛媛大も自治体と協力してスマでブランド化を目指す。先行する近畿大学発のマグロは成功を収めており、水産加工会社も本腰を入れ始めた。環境配慮や地場振興に寄与し、天然物と変わらない味を備えた養殖魚に飲食店などからの注目が集まっている。

「サバ活」の名称でブランド化

「天然物と味は変わらない」。佐賀県玄海地区にある7カ所の旅館で、昨年9月下旬に振る舞われた完全養殖によるマサバの生け作りに地元関係者らは驚いた。提供されたのは、新しい水産資源づくりを目指し同県唐津市が12年に設立した、水産業活性化支援センターで採卵から育成まで人工で育ったマサバだ。30センチ弱(約400グラム)のサイズを月200匹出荷できるようになり、商業化にこぎつけた。同市と共同で約2年かけ養殖に成功した九州大学農学研究院の長野直樹准教授は「共食いやストレスによる死を防ぐのに苦労した」と振り返る。この地区では旧来、「呼子(よぶこ)のイカ」が有名だったが、サバの活(い)け作りからとった「サバ活(かつ)」の名称で新たなブランドの育成に取り組んでいる。

かつてはサバ、アジ、マダイ、イカ類などが水揚げされる全国有数の漁業の町として知られた。しかし、乱獲や気候変動による影響で水産資源は減少傾向にある。漁業従事者は高齢化が進み、後継者不足も深刻だ。農林水産省によると、この地域の漁業経営体数は2008年に約900と、ピークだった1968年に比べ約3分の1となった。漁獲量(12年)もピーク時の81年に比べ4分の1に落ち込む。旅館など地元関係者は観光客誘致も含めた地場産業の活性化につながると期待する。

サバ科のスマ、「味はクロマグロ以上」

大学と自治体が協力してブランド化を目指すケースはほかにもある。愛媛大学の南予水産研究センター(愛媛県愛南町)では、マグロと同じサバ科だがサイズが小さいスマの陸上養殖に取り組んでいる。同大学農学部の松原孝博教授は「クロマグロと味が似ている。ただ、おいしさはそれ以上と評価する人もいる」と説明する。見た目がカツオに似ているスマの重さは10キロ程度で、マグロの10分の1程度だ。ビジネスとして確立させるため、効率の良い養殖技術の研究を進めている。「産業レベルまで引き上げる研究はほかにない」(松原教授)

飼育しやすいため、地元の養殖業者への普及を目指す。まずは、2016年12月ごろに同センター発のスマを出荷したい考え。県の試算では卸価格は1キロ2千~2500円程度。養殖マグロは同3千円程度するため、軌道に乗れば十分に収益を上げられるとみている。県は愛媛発ブランドの「愛育フィッシュ」として売り出すことを目指している。

今後は低水温に強い種を作る研究を進める予定だ。スマは県北沖の水温と同程度のセ氏14度を切ると生存率が大きく下がってしまう。3~5世代にわたって交配を重ね「10年程度で実現させたい」と松原教授は意気込む。

日本水産系、銀ザケの「境港サーモン」育成

にわかに活気づいてきた養殖魚市場に企業からも熱い視線が注がれている。日本水産の連結子会社で鳥取県境港市にある弓ケ浜水産は今年3月、養殖場に近接した本社工場を新設した。主に銀ザケの自社ブランド「境港サーモン」を育成、加工、販売する。いけすには日水開発の自動給餌システムが装備されており、省人化が進んでいる。魚がついばむと海中に垂らした管から配合飼料が出る仕組み。工場に水揚げされた魚はフィレなどに加工され、パック、箱詰めまで最短10分で完了する。衛生面も厳格に管理しているため生食用の加工が可能だ。

境港サーモンを食べると、養殖魚特有の餌に含まれる魚油由来の匂いはほとんどなく、刺し身はぷりぷりとした食感が味わえる。焼いたものはふっくらとして柔らかい。ほどよく乗った脂が口中に広がる。

技術開発や流通ですでに成功している例としては、世界で初めて完全養殖に成功した近畿大学の「近大マグロ」が有名だ。販売などを手掛ける近大発ベンチャー(VB)のアーマリン近大は、飲食店「近畿大学水産研究所」を大阪市と東京・銀座で展開する。5月中旬の夜、銀座店は満席だった。1番人気は近大マグロをはじめ、近大が養殖を手掛けた魚の刺し身盛り合わせ。この日は、タイ、ブリ、シマアジ、マグロの中トロ、大トロで、各3切れ付いて2700円(税抜き、以下同)だった。マグロは139センチ、重さが50.9キログラムのものが使われたそうだ。口に入れると、まだ若いせいか少し固い気がしたが、脂にクセがなく、天然物と変わらない。皿には近畿大学が育てた証明となる「卒業証書」が付いていた。

近大マグロの特徴「品質が均一、味が安定」

畠山浩崇店長は近大マグロの特徴について、「品質が均一で、中トロ、大トロなどどんな状態でも味が安定している」ことだと説明する。餌や環境を厳格に管理しているためだ。料理する時も扱いやすいという。マグロを使った料理では「巻き寿司」1500円、オードブルの「アボカドのタルタル最中」650円などがあり、扱いやすいだけに種類も豊富だ。養殖物は天然物に比べ脂が多いため、「火を通す料理に使うものは1日弱、(しょうゆなどで)『漬け』にする」という。

店を訪れた都内在住の会社員、工藤千秋さん(23)は「物珍しさもあって初めて来た。刺し身を食べたが大学が育てた養殖の魚だとは信じられない」と目を丸くしていた。同ブランドのマグロは流通量が少ないものの、一部百貨店の生鮮売り場でも扱っている。取り扱いを望む量販店は引きも切らないという。

乱獲や気候の変化に伴い、水産資源は減少傾向にある。魚種によっては技術が確立してなく、完全養殖についてはまだ一般的とは言いがたい。国内では魚介類については天然志向が強いが、今後は養殖魚ともうまく付き合っていく必要がある。魚が背負っている期待に思いをはせて食べると、違った味わいが出るかもしれない。

(高野壮一)

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