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五輪の足元、段差や傾斜を「見える化」 車いすも安心 NPOやボランティアなど、地図・リスト作って公開

2017/9/13 日本経済新聞 朝刊

車いす体験をしながらタブレット端末でバリアフリーマップを作成する参加者ら(7月14日、東京都千代田区)

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、街中のバリアフリーに関する情報を集約し、広く発信する取り組みが動き始めた。道路の段差や施設の改修状況などをまとめて公表したり、自治体・企業に提供したりする。情報を容易に把握できるようにし、国内外から訪れる障害者や高齢者に役立ててもらうことを目指す。

 「小さな段差でも、車いすで乗り越えるのはこんなに難しいのか……」。7月中旬の昼すぎ、JR水道橋駅(東京・千代田)周辺に約50人の男女が集まった。汗だくになりながら手元のタブレット(多機能携帯端末)を操作し、道の段差や傾斜などを調べた。

 参加者はトヨタ自動車やNTTなど大手企業の若手社員ら。交代で車いすに乗り「通行しにくい」と感じた場所をチェック。アプリを入れたタブレットを地面に置くと、段差の位置や傾斜角度が計測され、結果がアプリ内の地図にまとめられる仕組みだ。

 主催したのは経団連などでつくる任意団体「オリンピック・パラリンピック等経済界協議会」。調べた情報を「バリアフリーマップ」としてまとめて自治体や企業に提供する。広報誌で紹介したり、施設への道順表示に反映したりすることを想定する。この日は千代田区福祉総務課の職員も参加し、ノウハウを学んだ。

 この夏は渋谷区や静岡県伊豆市など、競技会場ができる地域でも調査する。端末を提供するなどしてプロジェクトにかかわる富士通の担当者は「地域住民や学校とも協力し、快適で安全な観戦・観光を後押ししたい」と話す。

 NPO法人「リーブ・ウィズ・ドリーム」(東京)は都内にある車いす対応の公共トイレや博物館や美術館、公園のバリアフリー状況を地図やリストにしてホームページで紹介している。観光スポットへの移動経路を矢印で示すほか、「ホームと電車間の隙間が広い」といった詳細な情報も盛り込む。

 調査を担うのはボランティアで参加している住民たち。現在は全て日本語だが、五輪をにらんで今秋には英語版を公開する。「訪れた外国人に自由に街を楽しんでほしい」と金子久美子理事長。

 06年のバリアフリー新法施行を機に、公共交通機関や施設では整備が進む。ただまとまって確認できる情報は少なく、分かりやすい形での情報発信が課題になっている。

 国土交通省は17年6月にまとめた東京五輪・パラリンピックに向けたバリアフリー施策の方針案で、「ハード面の整備と一体となったソフト面の取り組み」の必要性を強調。具体策としてバリアフリー情報の「見える化」を挙げた。

 五輪史に詳しい筑波大の真田久教授は「前回の東京五輪は戦後復興を世界に示す場だった。今回は世界が抱える課題に対し、解決モデルを示すことが求められている」と指摘。バリアフリーの情報発信などを通じ「障害の有無にかかわらず参加できる大会や街の姿を、国内外にアピールしてほしい」と話している。

[日本経済新聞朝刊2017年8月18日付]

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