イクジイは「ちょっちゅね」 孫の育成、祖父母が担うWの未来 俺に任せろ

「『ちょっちゅね』って言える?」。孫娘(2)に話しかけるのは元ボクシング世界チャンピオンの具志堅用高(59)。近くに住む孫の着替えを手伝ったりご飯を食べさせたり。「孫に生きる元気をもらっている」。長女の麻衣(30)は元客室乗務員で、今は具志堅のボクシングジムの経営を手伝いながら幼稚園で英語も教える。会社員の夫は帰宅が遅い。麻衣は「父がいるから安心して働ける」と話す。

孫育て講座開く

育児の新たな担い手として期待されるのが定年退職した団塊世代を中心とする祖父たち(イクジイ)だ。

孫と遊ぶ具志堅さん(東京都杉並区)

NPO法人エガリテ大手前(東京・杉並)は2010年から孫育て講座を開き、ソムリエと祖父をひっかけて「ソフリエ」として認定している。

講座では赤ちゃんの人形を使って抱っこや入浴、おむつ替え、離乳食の調理などを教える。既に約350人が認定を受けた。代表の古久保俊嗣(60)は「自分が子育てを妻任せにしてきたことを反省し、退職後の生きがいを孫育てに見いだす祖父は多い」と指摘。「祖父が働く娘世代を支えれば、待機児童問題だって解決するはず」と断言する。

内閣府が13年に20歳以上の約1600人に調査したところ、79%が「親の育児や家事の手助けを望む」と回答。理想の住み方は「親との近居」が31%、「親と同居」が20%で、合わせると半数以上だ。

こうした意識を反映し、旭化成ホームズの二世帯住宅の比率は5年ほど前まで10%台だったが、最近は2割を上回る。間取りも子供部屋に、祖父母世帯から直接入れるように変わり、「共働きでも子供を祖父母に見てもらえるという安心感も、二世帯住宅の人気を支えている」(同社)。

孫相手には財布のヒモも緩む。祖父母から孫などへの教育資金の贈与が1500万円まで非課税になった昨年4月。川崎市で4代続く開業医の3代目である大橋勲(80、仮名)は、私立大の医学部に入学した孫娘に満額の1500万円を贈与した。

教育贈与8万件

信託銀行各行がお金を預かり管理する「教育資金贈与信託」の契約は7月末時点で8万件を超え、5400億円にのぼる。すでに350億円が教育費に使われた。3万6千件余を扱う三菱UFJ信託銀行によると、約6割が祖父から孫への贈与だという。

スポーツクラブ大手、ルネサンスの会長で経済同友会幹事の斎藤敏一(70)は元イクメン、今イクジイだ。看護師の妻と共働きで4人の子供を育て上げ、「苦手な料理以外はすべて分担した」。現在は孫8人のうち国内で暮らす7人の育児を手伝う。「父親や祖父母が一緒に育児を担っていけば、母親は時間ができ、社会に出ていける」と斎藤は言う。イクメンは将来のイクジイ予備軍でもある。

少子高齢化で労働力人口が減る中、女性の活躍と次世代の育成は経済成長に不可欠だ。どちらも実現するには、あの手この手で総力戦で挑む必要がある。物理的にも経済的にも支える手を持つイクジイが果たせる役割は大きい。(敬称略)

おわり