看護の仕事 「指示待ち」から「自ら考える」へ

2014/8/30
女性が9割以上を占める看護師の仕事の幅が広がり始めた。医師不足や在宅医療の普及などを背景に、医師の判断を待つだけではなく、自ら診療行為の一部を担ったり、介護・看護事業を手掛けたりする動きがでてきた。
特定看護師として患者の診察をする多田朋子さん(埼玉県熊谷市)

 「検査の数値は安定しています。もう退院しても大丈夫ですよ」

8月初旬、埼玉県熊谷市の熊谷総合病院。糖尿病の入院患者に「退院OK」の判断を示したのは医師ではない。看護師の多田朋子さん(46)だ。

入院患者の状態を診て、患者や家族に説明する。週1日、糖尿病内科の外来診療も担当する。非常勤の糖尿病担当医だけでは足りない部分を、医師と緊密に連携しながら補う。

特定看護師として診療の一部担う

診療行為は原則として医師にしか認められていないはず。多田さんは特定の診療行為ができる研修を受けた看護師だ。「特定看護師」とも呼ばれる。政府は医師不足を踏まえてこうした看護師の育成に向けて制度づくりを進めている。そのために全国で実施した試行事業で、多田さんは糖尿病の治療の研修を受けた。

体育大学で運動による健康づくりを学んでいた。そこから看護に興味を持ち、卒業後、専門学校に通って看護師資格を取得。最初は病院の救急部門で働いた。「充実していた」が、医師がいないと何もできない状況に違和感も持つ。

「苦しい」と訴える患者の背中をさすって、「今、先生来ますから」というだけの看護師でいいのか。そんなとき、診療ができる看護師を大学院で育てる記事を目にする。すぐに入学を決め、働きながら勉強し、2年後、「特定看護師」となった。

かつてない働き方は苦労の連続。「なんで勝手にそんなことができるのか」と白い目を向けられたこともある。なんどもくじけそうになるが、自分を頼ってくれる患者もいた。それを考えるとやめられなかった。

それから3年余り、説明を重ねて同僚の理解も進んだ。今では「医師不足の中、大いに助かっている」(木村道雄病院長)、「説明がわかりやすい」(60代の男性患者)と評判も上々だ。多田さんは「人に頼られ、その責任を果たしていくのは大変だけど、大きなやりがいがある」とほほ笑む。

次のページ
高度な能力 資格も増加