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敬語の使いこなし術(上) バイト敬語 もう卒業 「~になります」「~の方」…トラブルのもと 会話録音 癖直す

2016/4/18付 日本経済新聞 夕刊

=PIXTA
ビジネスパーソンにとって敬語はコミュニケーションの基本だ。きちんと使いこなせないと、周囲からは「非常識だ」「学生気分が抜け切れていない」と見られ、相手にしてもらえなかったり、トラブルのもとになったりする。正しい敬語を話すためのポイントを2回に分けて紹介する。

佐々木亮太さん(仮名)は最近、悩んでいる。学生時代、アルバイト先で覚えた敬語で話すたび、周囲の表情がこわばるようなのだ。自分では気を使っているつもりだが、いったいどこがおかしいのだろう――。

飲食店、コンビニエンスストアといった職場で使われがちな「バイト敬語」は、ビジネスの現場にはふさわしくない。「こちらの方、資料になります。1部でよろしかったでしょうか」といった言い回しだ。

スピーキングエッセイ(横浜市)取締役講師代表の大嶋利佳さんは「丁寧な印象を与えようと、『になります』『の方』などを付ける人は多いが、これらは誤った表現。『よろしかったでしょうか』と過去形を使った言い方も不適切」と指摘する。「敬語をうまく使いこなせないと誤解や不信を招き、クレームも受けやすくなる」と大嶋さん。

このほか、バイト敬語に多い不要な言葉にはどんなものがあるのか。メディエテ(東京・渋谷)代表でコミュニケーションコンサルタントの小林作都子さんによると、「銀行振込という形になります」の「形」、「お名前、ご住所から伺います」の「から」などだ。

「ご住所の後に『から』をつけると名前の前に住所を言わなければいけないのか、と思われる可能性もある」と小林さん。会話を録音してみると自分の癖を発見しやすい、と助言する。

■二重敬語にも注意

丁寧な印象を強めようと、「二重敬語」を使いがちな若手も多い。「今、おっしゃられた内容を、担当の者にお伝えさせていただきます」などだ。

「おっしゃられた」には「おっしゃる」と「れる・られる」という2つの尊敬語が含まれている。「相手を立てているつもりだろうが、違和感を与えやすい表現。『お伝えさせていただきます』も、『お伝え』『させていただく』と、二重に謙譲語が使われている。『お伝えします』『伝えさせていただく』でよい。シンプルな表現を心がけてほしい」と小林さん。

若者言葉も避けたい。「『マジですか』『超ウケます』といった具合に、『です・ます』さえ付ければ敬語になると思っている人もいるが、ビジネスシーンには不向きだ」と小林さんは言う。

同じく若者言葉の「普通にいい」などの「普通に」も、人によって理解の仕方が違い、正しい意図を伝えにくいので、使わない。「僕的には」も禁句だ。「私といたしましては」といった言葉に言い換えよう。

「ビジネスの場では、丁寧語よりも敬語や謙譲語を使う方がよい」と指摘するのは、企業、個人向けのスピーチ研修を手掛けるKEE’S(東京・渋谷)代表取締役社長、野村絵理奈さんだ。

「佐々木様でございますね」の「ございます」は丁寧語なので「佐々木様でいらっしゃいますね」が望ましい。また、「了解しました」は「かしこまりました」「承知いたしました」とする方がよい。了解は「理解した」という意味で、敬語の意は込められていない。

■最初と最後しっかり

敬語を尊敬語と謙譲語を取り違えた言い方もよく見られる。「パンフレットは拝見しましたか」「お客様が参ります」などだ。「パンフレットはご覧になりましたか」「お客様がいらっしゃいます」などとする。「誰を立てたいのかを意識しよう」(野村さん)

敬語を使いこなしたいと思えば思うほど緊張してしまう、という人はどうすればいいだろう。大嶋さんは「まず、会話の最初と最後だけはしっかり敬語で話しては」と助言する。冒頭で「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」、締めくくりに「行き届かない点もあったことと存じますが、引き続きよろしくお願いいたします」などの一言を入れれば、印象がぐっと変わるはずだ。

(ライター 西川 敦子)

[日本経済新聞夕刊2016年4月18日付]

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