先生はパラリンピアン特別支援学校、選手を招き交流

車いすマラソンのトップアスリートから指導を受ける池田恵美さん(右)(東京都立城南特別支援学校提供)
車いすマラソンのトップアスリートから指導を受ける池田恵美さん(右)(東京都立城南特別支援学校提供)
2020年の東京五輪・パラリンピック開催まで4年。東京都や特別支援学校がオリンピック・パラリンピック(オリパラ)教育に力を入れている。大会について学ぶことで、外国への理解を深め、障害者が置かれている現状を知ることにもつながる。世界を舞台に活躍するパラリンピアンと授業で交流し、アスリートを目指す子供も出始めた。

「センスがあると褒められ、自分も競技に参加してみたいと思った」。3月に城南特別支援学校高等部(東京都大田区)を卒業した池田恵美さん(18)は、パラリンピックロンドン大会でマラソン男子(車いす)5位になった花岡伸和選手(40)から競技用車いすを使って指導を受けた。

「世界と渡り合う大変な努力知った」

花岡さんは昨年、同校に講師として招かれ、生徒らを前に講演。その一環として、マラソン用の車いすの体験指導にあたった。

池田さんも花岡選手も事故が原因で車いす生活に。池田さんは「世界と渡り合うまでに大変な努力があったことを知った。今は憧れの存在」と話す。現在、福祉の専門学校に通う池田さんは「車いす競技の練習方法を母校の先生に相談しようと思っている」という。

開催地から優秀な選手を育てようと、都は1月から「パラリンピック選手発掘プログラム」をスタートさせた。約270人が参加している。トップレベルの指導者の下で、アーチェリーなど十数種類の競技を体験する。試合形式の練習も取り入れ、各競技団体の関係者が将来のパラリンピアンを見いだそうと、熱心に練習を見つめる。

府中けやきの森学園高等部(東京都府中市)3年の四十物栄助さん(17)は、学校に講演に来たバレーボール女子五輪代表選手らを間近で見たことがきっかけになり、プログラムに参加した。「練習で腕の力も鍛えられる」とパワーリフティングの選手を目指す。

パラリンピックは下半身まひを意味する「パラプレジア」から「パラ」の文字を取った造語。開催当初は車いすを使う障害者の大会だった。車いす以外の競技が加わったのは1964年の東京大会からだ。「パラ」の意味合いはオリンピックとの並列を指す「パラレル」に変わった。

画期をつくった東京に再び戻って来るパラリンピック。府中けやきの森学園でオリパラ教育を担当する増田衛教諭は「日本で開催することによって、障害を持つ人の生活や就労環境への理解も進めば」と期待を込める。同学園では、ボタンを押すと矢が飛び出る教員自作の器具でやり投げを体験したり、オリンピックをモチーフにした貼り絵を作ったりと、幅広い学習プログラムを実践する。

競技から一歩離れて各国の事情学ぶ

近隣の小中学校との五輪・パラリンピックを軸にした交流も活発。中学部2年の関孝将さん(13)は、他校の生徒に「夏季と冬季どちらが好きか」「好きな五輪選手」などのアンケートをとり、両校で集計結果を発表した。関さんは「(東京大会に)ボランティアとして参加できるかも。追加種目のルールを勉強しなきゃ」と意気込む。

城南特別支援学校では、競技から一歩離れて、各国の事情を学ぶ機会としてもオリパラ教育を活用している。インド産の香辛料を使った料理を作ったり、身体が硬直しやすい子どもが足湯のおけにフランス産のバスソルトを入れて様々な香りを体験したりして、五感を使って各国事情を学ぶ。

同校の柚木秀彦教諭は「重度の障害を持つ子も表情で楽しんでいることが分かる。他校と情報共有しながら、よりよいものにしていきたい」と話す。

東京都、全小中高にオリパラ学習教本

東京都が配布した「オリンピック・パラリンピック学習読本」

東京都は「オリンピック・パラリンピック学習読本」を作成し、3月に私立や国立を含む都内の全小中高校に配布した。小学生、中学生、高校生と段階ごとにレベルや内容を変えて編集し、パラリンピックを紹介する項目には障害を持つ人や障害者スポーツに対する理解を深める内容も盛り込んだ。

小・中学生向け読本では「障害者スポーツを体験しよう」と各競技を紹介。用具やルールの工夫で、様々な障害を持つ人が、高いレベルでスポーツに取り組めることを説明した。

高校生には、千葉県のメーカーが作った車いすがこれまで106個のメダル獲得に貢献したことなど、日本の製造業のレベルの高さが障害者スポーツの発展と深く関わっていることを解説した。

都教育委員会は4月以降、教員向けに教材の講習会も開く。担当者は「教材をもとに児童・生徒同士で話し合ったり、調べたりして、教科を超えた能動的な学習をする機会にしていきたい」と話している。

[日経夕刊2016年4月15日付]