グランドフィナーレ老いを通し、生きる意味描く

人は老いに向かって生きるが、老いと若さとの境界はどこにあるのか。「若さ」という原題を持つパオロ・ソレンティーノ監督の新作である。高級ホテルでバカンスを過ごす有名な老作家を主人公に、老いることの実相を通して、生きることの意味を独特の映像美で描き出している。

舞台はスイス・アルプスの麓にある高級ホテル。世界からセレブが集う中に、80歳になる著名な作曲家のフレッド(マイケル・ケイン)がいる。そんな彼にイギリス王室から彼が作曲した「シンプル・ソング」を指揮してほしいと依頼されるが、彼は頑(かたくな)に断る。

ホテルにはフレッドと昔から親友である映画監督のミック(ハーヴェイ・カイテル)も宿泊。遺言となる最後の映画の脚本を若い人たちと執筆している。フレッドの娘のレナ(レイチェル・ワイズ)はミックの息子のジュリアンと結婚しているが、彼が新しい恋人を作ったためにひと騒動が持ち上がる。

フレッドとミックはいつも朝の尿がうまく出たかどうかと互いに老いた身体の話を交わすが、ミックの最後の映画への熱い傾注ぶりに比べると、フレッドは無気力症にあることを自覚して人々の姿を静かに眺めている。

映画はしばしばフレッドをはじめ登場人物の夢や幻想を織り込んでいるが、2人がプールや温泉に入っているシーンではカメラが時おり水面すれすれで上下する映像を映し出している。それはまるで2人の心の揺れ動きを象徴しているようで面白い。

ミックは女優のブレンダ(ジェーン・フォンダ)に出演を断られて悲劇を迎える。一方、フレッドは仕事を拒否した個人的な理由を乗り越えて久々に指揮に挑むが、その演奏と歌声は映画のフィナーレと重なって老いと若さの境界を超えて見る者の心に響きわたる。2時間4分。

★★★★

(映画評論家 村山 匡一郎)

[日本経済新聞夕刊2016年4月15日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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