昆虫の親子の形の違い 食べ物や暮らす場所で変化

昆虫は子どもと大人でなぜ形が違うの?

スーちゃん 博士、見て見て。菜の花畑にさなぎがあったよ。きれいなチョウになるのが楽しみだな。チョウって幼虫と成虫で大きく形が変わるよね。「完全(かんぜん)変態(へんたい)」と習ったけど、なんでそんなことをするのかな。

食べ物や暮らす場所に合わせて変化するんだ

森羅万象博士より もうすぐからをぬいで羽化(うか)してチョウになりそうだね。アオムシやイモムシと呼ばれるチョウの幼虫はきれいなはねを持つチョウとはまったくにていない。カブトムシやクワガタもそうだね。

幼虫からさなぎになってまったくちがう姿の成虫に変身する育ち方を「完全変態」というんだ。はねや脚(あし)といった見た目だけでなく、内臓(ないぞう)も大部分が変化しているんだよ。だから、幼虫と成虫は食べるものがちがうんだ。

さなぎにならない育ち方を「不完全変態」と呼ぶ。バッタやカマキリ、コオロギなどだ。これらの昆虫は幼虫から成虫になる間に大きさは変わるけど、形はよくにているよね。こうした昆虫は食べるものもにていることが多い。バッタは幼虫も成虫も植物を食べるし、カマキリは別の昆虫を捕まえてエサにする。

ちょっとちがうのがトンボだ。ヤゴと呼ばれる幼虫のときは水中で小さな魚などを食べる。成虫になると空を飛び回って昆虫をエサにする。形や食べ物は変わるけど、さなぎにならないから不完全変態なんだよ。セミも同じだね。まったく姿を変えないトビムシやシミという昆虫もいるよ。

なぜ、完全変態するのかな。幼虫と成虫のちがいを見ると理解できるんじゃないかな。例えば、チョウの幼虫は植物の葉などを食べている。成虫は空を飛び回って花のみつを吸う。カブトムシも幼虫のときは土の中で腐葉土(ふようど)などを食べ、成虫になると空を飛んで木の樹液(じゅえき)をなめる。

完全変態するのは、その方が生きのびるうえで有利だからと考えられている。幼虫の時期はエサが多い場所でひたすら食べて早く大きくなった方がいいよね。エサをどんどん消化して栄養をたくわえられるように、完全変態する昆虫の幼虫は胃や腸に当たる部分が大きく長くなっている。

成虫になった後は子孫(しそん)を残すために、オスとメスが出会う必要がある。幼虫のように、ずんぐりむっくりで脚が短いと、移動するのも大変だ。だから、大きなはねで飛ぶ方が有利なんだ。

さなぎの中で、昆虫はどう変身しているのだろう。実は、はねや脚、触角(しょっかく)などのもとは幼虫がうまれて間もないころにはできている。こうした細胞のかたまりが幼虫の体の中にかくれているんだ。さなぎになる前からかたまりはどんどん大きくなって袋(ふくろ)になる。さなぎになるときに、はねや脚は体の外に出てくるんだ。そのころには大人の体になりかけている。

さなぎになると、幼虫のときにあった小さな脚や筋肉などは小さくバラバラになってしまう。もし、さなぎになったばかりのころに中をのぞいたら、どろどろのクリーム状になっているよ。バラバラになった幼虫の体ははねや脚、触角などをつくるのに使われている。サナギはじっとして動かないけれど、からの中では体の中身をすごい勢いでつくりかえているんだ。

■地球は昆虫の惑星だ

博士からひとこと 昆虫は海をのぞけば地球のあらゆる場所にすみついている。国際自然保護連合という生物の科学者らの団体が調べたところ、地球上で見つかっている昆虫の種は約100万種いる。生物全体で約173万種だから、半分以上が昆虫ということになるね。いわば地球は昆虫の惑星(わくせい)だ。
昆虫がこれだけ栄えたのは地球の環境(かんきょう)に合った形に進化したからだ。その大きな理由が空を飛べるようになったこと。昆虫は4億8000万年前に地球に現れ、4億年前には空を飛んでいたそうだ。海にいた脊椎(せきつい)動物が陸上に現れるよりもはるかに前だ。完全変態するようになったのも、昆虫が栄えた理由のひとつだと考えられているよ。

(取材協力=片岡宏誌・東京大学教授)

[日経プラスワン2016年4月9日付]