吸血鬼 佐藤亜紀著土俗的な東欧の伝説に焦点

(講談社・1850円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

19世紀末、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』は広く知られるが、本書は西欧の都会的なロマン主義的怪物とは一味ちがう。土俗的な風習の残る東欧の伝説に焦点を定めている。

舞台は、19世紀ポーランド。

オーストリアに分割支配された辺境の村へ、政府の役人ゲスラーが若妻エルザと共に赴く。かの地にはかつて天才詩人の名をほしいままにした土地の実力者・クワルスキ男爵が蟄居(ちっきょ)している。おりしも村で、怪死事件が続き、埋葬の習慣に関して、ゲスラーは馴染(なじ)みのない光景を目にすることになるが……。

まるで東欧のどこかに長く隠されていた秘密の小説が、第一級の教養人によって邦訳されたかのような、官能的な美文。心から感嘆した。

★★★★

(ファンタジー評論家 小谷真理)

[日本経済新聞夕刊2016年4月7日付]

★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…

吸血鬼

著者 : 佐藤 亜紀
出版 : 講談社
価格 : 1,998円 (税込み)

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