吸血鬼 佐藤亜紀著
土俗的な東欧の伝説に焦点
19世紀末、ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』は広く知られるが、本書は西欧の都会的なロマン主義的怪物とは一味ちがう。土俗的な風習の残る東欧の伝説に焦点を定めている。
舞台は、19世紀ポーランド。
オーストリアに分割支配された辺境の村へ、政府の役人ゲスラーが若妻エルザと共に赴く。かの地にはかつて天才詩人の名をほしいままにした土地の実力者・クワルスキ男爵が蟄居(ちっきょ)している。おりしも村で、怪死事件が続き、埋葬の習慣に関して、ゲスラーは馴染(なじ)みのない光景を目にすることになるが……。
まるで東欧のどこかに長く隠されていた秘密の小説が、第一級の教養人によって邦訳されたかのような、官能的な美文。心から感嘆した。
★★★★
(ファンタジー評論家 小谷真理)
[日本経済新聞夕刊2016年4月7日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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