「午前十時の映画祭」 傑作そろえ中高年つかむ
「午前十時の映画祭」は名前の通り、過去の名作を午前10時から映画館で上映する企画。スクリーンで映画を見る楽しさを味わってもらおうと2010年2月に全国25館で始まり、今では55館まで広がった。今年1月末には累計の観客動員が300万人を突破したという。
主催しているのは、公益事業として映画や演劇の振興活動をする映画演劇文化協会(東京・千代田)。洋画離れを食い止めようと当初は洋画を中心にプログラムを組んだ。第1回は映画ファンの投票や有識者の推薦をもとに「ショーシャンクの空に」「ローマの休日」など50本を選び、各映画館が1本を1週間上映するペースで1年かけて全作品をフィルム上映した。
蓋を開けると、目標を8万人上回る年間約58万7千人が来場。「上映に加わりたい」と手を挙げる映画館も新たに現れ、翌年度の第2回は全国50館に倍増して86万3千人を動員した。上映方法がデジタルへと切り替わったのを機に、13年度から「新・午前十時の映画祭」と名前を変え、14年度以降は「羅生門」「飢餓海峡」などの日本映画もラインアップに加わった。
観客は50歳代以上が多いという。映画演劇文化協会の貝谷真二・事業本部長は「80代のご夫婦が『カサブランカ』を鑑賞したいと来場したこともある」と言い、人気の背景を「力のある傑作をそろえたこと」と語る。「例えば『七人の侍』は62年前の作品だが、時代を超えた普遍性がある。古典でありながら新作のような新鮮さを感じてもらっているのではないか」。減少する名画座の受け皿になっている面もあるようだ。
常連に「殿堂入り証明章」を発行するキャンペーンを行い、全作品を制覇した「金の殿堂」の観客もいるという。今年度は「午前十時の映画祭7」という名称で、ファンの要望が強かった「ティファニーで朝食を」や独立プロ作品「午後の遺言状」などを新たに取り上げる。夏には「バック・トゥ・ザ・フューチャー」3部作の一挙上映を予定している。
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[日本経済新聞夕刊2016年4月6日付]
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