津波って、どんなしくみで起こるの?

2016/4/5

子どもの学び

津波ってどんなしくみで起こるの?

スーちゃん 東日本大震災のときに大きな津波が来る映像をいっぱい見たよ。5年たったけど、家があっという間に流されてこわかった。津波が起きるのは地震で海水がゆれるから? 台風の高波とちがうの?

海底が海水を持ち上げて大きな波を作るんだ

森羅万象博士より 津波は海底にある断層がずれることで起こる。地面のゆれで海水がゆさぶられるからではない。ずれた断層によって海底が盛り上がって、海水が押し上げられるからなんだ。それが大きな波となって四方に広がり、陸に押しよせるのが津波だ。

東日本大震災は地震の規模を示すマグニチュード(M)が9.0と巨大で、断層は30メートルもずれたといわれる。それで海底が大きく盛り上がったから津波も巨大になったんだ。断層が横にずれた場合は水は押し上げられないから、大きな津波は発生しないよ。

台風が近づいてきたときのような強い風でできる高波だと、海の表面近くの水だけが動く。高さ3メートルの波といっても、一時的に3メートルに届くだけだ。

一方、津波の場合は海の底から表面までの水が巨大なかたまりになって押しよせてくる。大量の海水のため、水位は低くならず、山の斜(しゃ)面をかけ上ることもある。

だから、被害(ひがい)が大きくなるんだ。津波は低くても安心できない。高さ50センチメートルでも大人は動けなくなり、流されてしまうこともある。2メートルあったら木造の住宅はあとかたもなくこわれる。8メートルだと欧州に多い石造りの建物も危ない。

津波はすごく速い。例えば、深さ5000メートルほどの海で高さ1メートルの津波が発生したとする。最初は時速800キロメートルで進む。ジェット飛行機が空を飛んでいるときの速さと同じくらいだ。

浅くなるにつれて遅(おそ)くなり、だんだん波の高さが増す。深さ100メートルだと時速約110キロメートルで高さが3メートル。深さが10メートルほどの浅瀬になると、短距離(きょり)走の選手ほどの時速36キロメートルまで落ちるが、津波の高さは9メートルにもなる。

津波はとても遠い場所にも届く。例えば、1960年に南米チリで起きたM9.5という史上最大の地震では、1日後に津波が日本の太平洋沿岸をおそった。およそ1万7000キロメートルの距離を進んだことになる。このとき、東北の三陸海岸を中心に100人を超す死者が出た。

三陸海岸は津波が高くなりやすく、東日本大震災でも多くの人が命を失った。他の沿岸部よりも津波が高くなりやすいのは湾が入り組んだ複雑な地形が関係している。「リアス式海岸」と習ったよね。

湾の入り口は広くて大量の海水が押しよせてくる。だんだん幅がせまくなっていくにつれて押しよせる波が高くなるし、勢いも増す。水道につなげたホースの先をにぎってつぶすと、水が勢いよく出るのと同じような仕組みだよ。特にV字の形をした湾は津波が高くなりやすい。

岬(みさき)の先のような所でも津波は高くなりやすい。津波は浅くなるとおそくなる。岬の先の海底は周囲よりも浅い。津波は浅い方へ曲がりながら進むから、岬の先に海水が集まるんだ。

海沿いで地震にあったら、すぐに高台や高い鉄筋コンクリートのビルに逃げることが大事だ。命を守る鉄則だとおぼえておこう。

■海に面してなくても…川を逆流する津波も

博士からひとこと 東日本大震災では、宮城県の北上川や旧北上川、岩手県の気仙川など河川を津波がさかのぼった。両岸の堤防をこえて水があふれ、市街地や田畑が広い範囲で水につかった。
 ゆるやかな流れの河川や運河などでは津波がさかのぼりやすい。北上川では河口付近で10メートルだった津波が約50キロメートル上流までさかのぼったそうだ。関東地方の利根川や荒川でも津波による逆流が見つかった。
 巨大地震の場合、はげしいゆれで地盤(じばん)が弱くなっていると堤防(ていぼう)がくずれる危険がある。海に面していない市町村でも津波対策を考える必要があるんだ。

[日経プラスワン2016年4月2日付]

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