基本的な知識をまとめた経済書が人気に
「大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる」井堀利宏著
経済学の基本的な知識をまとめた「大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる」(KADOKAWA)が異例の売れ行きだ。昨今の教養書ブームに加え、経済書「21世紀の資本」がベストセラーとなったことなどを追い風に、ビジネスマンを中心に幅広い読者を獲得。3月末現在で13刷16万部となっている。
著者は20年以上東大で教員を務めた経済学者。激変するビジネス環境を前に、教養としての経済学の重要性を強調。ミクロ・マクロ経済学の講義の内容を、図解を使って分かりやすくまとめている。
「タイトルをまず決めた」。担当した田中怜子・ビジネス書編集部副編集長は、同社のロングセラーとなっている「中学3年間の英語を10時間で復習する本」の切り口を、経済学の分野で応用できないかと考えた。「哲学や歴史と同じく、忙しいビジネスマンが手早く学び直したいとの需要がある」と踏んだためだ。
本書は「消費者はどう行動するのか」など20項目で構成。本格的な内容を短時間で読み通せるように、表現を柔らかくする調整を重ねた。1項目を30分で学ぶ計算だが、経済学の理解に最低限必要な8項目には「ココだけ!」マークをつけ、さらにハードルを下げる工夫を施した。
刊行は昨年4月。狙い通り都心のビジネス街の書店で売れ始めたが、意外だったのが大学生の支持。東大生協の駒場書籍部では、「経済」部門での売り上げが昨年7月からおおむね1位を続けている。早稲田大学近くの書店でも好調だったという。
帯の文言も効いたようだ。「好調なビジネス書の帯を変えるのはリスクと見る」(谷内博一・同部編集長)というが、若年層の支持が判明した昨秋以降は、帯で「東大生が1番読んでいる本」とアピール。購買者は現在、19~29歳と30~49歳が各40%前後で拮抗する。「ビジネス書の多くは売れても8~10万部が天井」(谷内氏)と見ていたが、今年初めに10万部を突破した。
購入者は7対3の割合で男性が多く、今後は女性の支持を狙う。年度替わりのタイミングとなる来月早々に2万部を増刷。書店店頭では「入学祝いにもおすすめ!」との文言を入れた店頭販促(POP)を展開し、プレゼント需要を掘り起こす考えだ。
(岸)
[日本経済新聞夕刊2016年3月30日付]
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