
カメラってどんなしくみで写真がとれるの?
スーちゃん ためていたおこづかいで、デジタルカメラを買っちゃった。春になったから、きれいな花や風景、虫の写真をたくさんとっちゃうぞ。そういえば、カメラはどんな仕組みで写真をとっているのかな。
レンズを通った光が暗い部屋の中で像を作るよ
森羅万象博士より 真っ暗な部屋のかべに小さな穴をあける。穴から差し込む光が反対側のかべにあたって外の風景がさかさまに写しだされる。紀元前から知られていた現象だ。
実はこれがカメラの最もかんたんな仕組みだ。真っ暗な部屋がカメラの胴体(どうたい)の箱の部分で、小さな穴に当たるのがレンズというわけだ。写真として記録して残せるようにしたのがフランスのジョセフ・ニセフォール・ニエプスだ。日本カメラ博物館によると、1826年のことだ。
カメラの仕組みは人間の目とよくにている。光を集めて像をつくるレンズは目の水晶体(すいしょうたい)で、光を感じる画像センサーは目の網膜(もうまく)に当たる。
光はまっすぐに進む。光は凸レンズを通るときにおれ曲がって内側に進み、1つの点に集まる。この点を焦点(しょうてん)と呼ぶ。虫めがねを使って紙をこがしたことがないかな。レンズを通った太陽の光が集まって小さな点になるよね。
凸レンズはまん中が厚く、周辺にいくにしたがってうすくなる。ふくらんでいる中心の方を通った光はあまりおれ曲がらず、ふちへいくほど大きく曲がる。それで、レンズにさしこんだ光が1点に集まるんだ。
レンズを通りぬけた光が集まってできる像は上下左右が反対になる。カメラでは画像センサーに写った像を処理するときに、上下左右をひっくり返している。人間の目も同じで、網膜に当たった光の像を脳(のう)の中で反転させているんだよ。
物体とカメラのレンズの中心との距離によって、画像センサーに写る像の大きさが変わってくる。
下の図のように、レンズの中心から焦点までの距離(F)の2倍のところ(2F)にろうそくを置いたとしよう。ろうそくの炎(ほのお)の先から出た光の一部はまっすぐに進み、レンズで曲がって反対側の焦点を通る。レンズの中央を通る光は曲がらずにそのまままっすぐに進む。この2本の線が交わった点ができたところにスクリーンを置くと、ろうそくと同じ大きさの像が写るよ。
ろうそくをその場所から遠ざけると、像は小さくなる。その場合はスクリーンをもとの場所からレンズの方に近づける必要がある。反対にろうそくをレンズに近づけると、像は大きくなるんだよ。
カメラではレンズに入る光を調節する部品がある。それがしぼりだ。しぼりを小さくすると穴が小さくなってレンズに入る光が減り、開いて大きくすると光が増える。きれいな写真をとるのにちょうどよい量の光が画像センサーに届くようにしているんだ。
人の目にある虹彩(こうさい)と呼ぶ部分が伸び縮みするのと同じ仕組みだ。このとき、目に光を取り込む瞳孔(どうこう)が大きく開いているよ。
今のカメラはピントをかんたんに合わせられるだけでなく、しぼりも自動で調節している。こうした工夫のおかげで、シャッターを押すだけで写真がとれるようになっているんだ。

博士からひとこと カメラの技術で最も大きく変化したのは像を記録する部品だ。写真技術を開発したニエプスは道路のほそうに使うアスファルトを記録用の材料に選んだ。その後、銀でおおわれた板に光を焼きつける方法になり、130年ほど前にフィルムが実用化された。
今のデジタルカメラは画像センサーという電子部品が使われている。レンズから入った光はセンサーで像をむすぶ。センサーは素子(そし)という小さなつぶが集まっていて、光を電気に変えて記録する。人間でいえば網膜(もうまく)にあたる。その性能が向上したおかげで、きれいな写真をとれるようになったんだ。
(取材協力=山本一夫・日本カメラ博物館主任学芸員)
[日経プラスワン2016年3月26日付]
森(しん)羅(ら)万(まん)象(ぞう)博士
さまざまな自然科学分野に詳しい科学者。スーちゃんに質問されると、研究そっちのけで解説してしまう。