模様替えの季節、はがせる壁紙で部屋と気分を一新
狭い場所なら大胆な柄も
思い立ったはいいが、自分の住まいは賃貸だ。管理会社に相談すると原状回復できるなら問題ないとのこと。他の賃貸も多くは原状回復を条件に貼り替えできるようだ。「ポスターを貼るのと一緒」と言われて安心した。
壁紙といっても裏地が紙の従来型は、きれいにはがしにくく跡が残りやすい。元通りにするのは難しい。海外メーカー製の多くは、今ある壁紙の上から貼れて、はがせば元通りになる。幅も多くが女性の肩幅ほどの50センチメートルで、従来型より小さく1人で持っても作業しやすい。並べて柄を合わせるのも楽だという。「これにしよう」
元の素材に合わせ のりの種類変える
訪ねたのは輸入壁紙専門店、ワルパストア 銀座(WALPA store GINZA 東京・中央)。小野田めぐみ店長は「今貼ってある壁紙の表面がビニール製なら、裏地が不織布の壁紙を、接着力のあまり強くないのりで貼れば、退去時に元に戻しやすい」と教えてくれた。
まず貼り替えたのはトイレ。小野田さんいわく、壁に囲まれ圧迫感のあるトイレは壁紙の影響力が大きい。滞在時間が短いから思い切ったデザインにもチャレンジしやすいのだという。図書館のように見える本棚の柄を選んだ。
壁紙貼りは、まずのり作りから。バケツに入れた水に、のりを少しずつ加える。のりが沈みきらないうちに混ぜたらダマができて失敗。ちゃんと沈みきってから泡立て器で混ぜて、40分ほどおくとおかゆ状になって、できあがり。
貼り始める前に、床が汚れたり傷ついたりしないようビニールシートを敷いて養生した。右利きなら左端から貼る。のり付けは主にローラーで。隅ははけを使う。壁紙は上下5センチほどを余らせる。貼ったあとは半月状の板に毛のついたなでバケで空気を抜く。基本通りにやろうとしたが、スムーズにはいかない。難所が多いのだ。ペーパーホルダーやコンセント、タオル掛け、配電盤が壁に付いている。外せるものは外して貼ると教わったが、どれも外せない。
ペーパーホルダーは壁紙に穴を開けて通そうとしたが、計算通りにいかなくて目立つ跡が残ってしまった。そこでタオル掛けはより慎重に、根元の金具を通す切れ目を入れた。それでも細い隙間を埋められず下地が線のように見える。コンセントは上から壁紙を貼った後に、表面に切り込みを入れて表に出す。便器の奥にあるため、きれいに切れず少しいびつに。便器の後ろの壁は、狭い隙間に手を入れながら、便器を抱え込むような格好でなんとか貼った。
手際よくとはいかず全部で4時間ぐらいはかかった。道具とのりで3991円、壁紙が2万3760円とお金も費やしたが、図書館にいるような光景は気分がいい。
トイレの壁紙を貼り替えた話を実家の父にすると「この家もできないか」と聞かれた。築20年弱。一度も壁紙を替えていない。しみがついて傷もあるという。和室ということもあり、国内メーカー製の従来型で試すことにした。
ホームセンター、カインズ鶴ケ島店(埼玉県鶴ケ島市)で、道具は表の(1)から(5)までで898円。壁紙は1万5870円で購入した。同店でDIYについて指南するコンシェルジュの小森ちひろさんに、ポイントを教わった。
小森さんは「一番は下地づくり。貼る面が平らになるように、へこみがあればパテで埋める」という。今回貼るのは小森さんが勧める、のりが付いたタイプの壁紙だ。貼り替えるのは8畳部屋の1面。元の壁紙をはがすと、幸いにも壁にへこみや穴はない。これなら、そのまま貼れる。
壁面の右端から壁紙の幅分90センチを測り、垂直に線を引く。壁面の高さプラス10センチの長さに壁紙を切り、のりのついた面のフィルムをはがす。運びやすいように、じゃばらに折った壁紙を広げ、垂直線に沿って左端から貼っていく。
幅が長くて重い… 柄あわせも難しい
幅は90センチ。1枚が思った以上に重い。脚立に乗りながらはがれないように片手で押さえて安定させ、空気を抜いてなでつけるのは苦しかった。一人では無理だ。父に手伝ってもらい、浮いている部分やずれた部分を教えてもらう。
とくに大変なのが柄合わせ。1回目、勢い任せで貼ったら、ちぐはぐになってしまった。重たい壁紙を細かく動かして合わせるのは骨が折れるし時間もかかる。
壁1面にかかったのは3時間以上。とても1人で気軽にとはいかなかった。とはいえ、和柄の小さな花模様で部屋はだいぶ華やいだ。手伝ってくれた父も納得顔で、苦労したかいがあった。
来年も替えようかな…
今住んでいる賃貸住宅の居間も壁紙を替えた。悩んだのはどんな柄を選んだらいいか。ワルパストア 銀座の小野田さんは「部屋に既にあるモノの色を考えて、どんなインテリアにしたいかあらかじめイメージを固めておけば、候補を絞りやすくなる」とアドバイスしてくれた。
居間の内装は白と薄茶でカーテンは薄緑。「どんな壁紙でも合わせやすい」と小野田さん。落ち着いた空間にしたかったので白地に青い絵柄のものを選んだ。
替えたのは1面だけ。それでもつくりかえたかのように部屋全体の印象が変わった。作業にも慣れてきた。来年もまた替えてみようか。
(小柳優太)
[日経プラスワン2016年3月19日付]
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