あるいは修羅の十億年 古川日出男著流れるような筆致に胸熱く

(集英社・2200円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

本書は東北詩人・宮沢賢治の「春と修羅」へのオマージュで始まる。つまり現代日本が抱える難問の心象風景をスケッチするかのように、捕鯨問題、東日本大震災からの復興、福島第一原発事故、東京オリンピック等が、近未来史の素材として登場する。

時代は西暦二〇二六年、主役は東京で数奇な因果関係をむすぶ十代の少年少女三名。舞台となる中野区鷺ノ宮、大井競馬場からみた東京論だけでも新機軸だが、そこに「島」と呼ばれる被災地および、原発事故後の立ち入り禁止区で特異な生態系を築く「森」の想像力が、導入されていくのだ。

古川ならではの流れるような筆致に、鋭い洞察力が閃(ひらめ)き、胸が熱くなった。

★★★★

(ファンタジー評論家 小谷真理)

[日本経済新聞夕刊2016年3月17日付]

★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…

あるいは修羅の十億年

著者 : 古川 日出男
出版 : 集英社
価格 : 2,376円 (税込み)

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