家族はつらいよ家族の切なさ、コミカルに

2016/3/13

映画セレクション

家族の愛や絆という言葉がよく聞かれるが、実際には家族の内実はドロドロとして煩わしいものではないか。夫婦は赤の他人だが、親子や兄弟は血のしがらみから揉(も)めると厄介である。そんな家族のやるせない事情をコメディータッチで描いた山田洋次監督のファミリー群像劇である。

東京郊外で暮らす3世代同居の平田一家。主人の周造(橋爪功)はサラリーマン生活を終えて隠居の身。妻の富子(吉行和子)は、長男の幸之助の嫁、史枝に家事を任せ、2人の孫の優しいおばあちゃん。長女で税理士をする成子は金井と結婚しており、次男で独身の庄太(妻夫木聡)はまだ家にいる。

そんな典型的な家族の平田家に大騒ぎが起こる。ある日、周造がふとしたことから富子の誕生日を思い出して欲しいものを聞くと、富子が離婚届を持ち出してきたからだ。やがて日曜日に周造と富子の離婚問題について家族会議が開かれることになる。

最近話題となっている熟年離婚。長年溜(た)まった富子の夫への不満と、そんな妻の心にまったく無自覚な周造の慌てぶり。その落差が切ない笑いを呼ぶ。会議は家族それぞれがてんでに言い争い、てんやわんやの大騒ぎとなる。そんな中、周造が興奮の余り卒倒してしまう。

「男はつらいよ」シリーズと同様に、家族という共同体がはらむ切なさや遣(や)り切れなさをコミカルに描き出していて楽しめる。その一方、例えばラストで周造が「東京物語」を見ているように、小津安二郎へのこだわり、「東京家族」の映画ポスターが張られているなど、山田監督の遊び心が顔を覗(のぞ)かせている。

喜劇映画が少なくなった今日、スター不在は残念であるが、娯楽性の中で社会的な批判や風刺が可能なジャンルである喜劇映画を巨匠には作り続けてほしい。1時間48分。

★★★

(映画評論家 村山 匡一郎)

[日本経済新聞夕刊2016年3月11日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…