介護家族お助け「お泊まりデイ」 デイサービスを延長ショートステイより手軽

「お泊まりデイ」というサービスをご存じだろうか。日中に高齢者の食事や入浴の世話をする介護施設のデイサービスを、夜も延長した宿泊付きサービスだ。今、手がける施設が増えている。仕事の都合などで、家に帰れない家族には助かる。一方で介護保険制度外のサービスなので、仕組みや実態はよく知られていない。現場を訪ねた。
夜勤の職員は利用者の様子をきめ細かくチェックする(東京都足立区の「デイサービスら・じょわ足立西新井本町」)

2月下旬の夜、東京都足立区の「デイサービスら・じょわ足立西新井本町」。職員の中島良太さん(25)は、80代の男性を布団に誘導していた。介護認定の要介護度2で認知症のある男性は「家に帰っていいかな」と何度も訪ねる。中島さんは「息子さんから、今日はここに泊まってもらうよう言われているんです」と優しく答える。やがて納得したのか就寝した。

男性は40代前半の次男と暮らす。昨年6月からデイサービスを利用し始めたが、徘徊(はいかい)が激しくなり、仕事で次男がいない夜は家に一人でいられなくなった。介護計画を作るケアマネジャーが見かねて「ら・じょわ」のお泊まりデイを紹介した。この日は4回目の利用だった。

中島さんは一睡もせず、男性を見守る。翌朝7時、男性は起床し、朝食を完食した後、9時前に車で帰宅した。男性は前日の午前9時から午後5時までをデイサービスとして過ごした。この間は介護保険が適用されるので、男性の負担は利用料の2割。その後、帰宅するまでのお泊まり料金は2食付きで2220円となる。

急に出張が入った、不幸があり遠方に行かなければいけない、といった緊急時にお年寄りを柔軟に受け入れてくれるお泊まりデイ。「他に泊めてくれる介護施設がない。私たちが受け皿」と中島さんは話す。

予約取りやすく

お泊まりデイは、介護保険法に基づいたデイサービス利用者を対象に、夜間に介護保険適用外の宿泊サービスを提供する事業だ。日中サービスの延長という考え方で、対象は当該施設のデイを利用する人のみ。公的調査はないが、約4万のデイサービス事業所のうち6000カ所ほど。今後も増加すると見られる。

介護保険制度では、自宅で生活するのが難しい人は特別養護老人ホーム(特養)で暮らす。だが大都市を中心に希望者が多く、入居は難しい。1回につき連続30日間まで泊まれるショートステイも予約を取るのが困難な状況だ。お泊まりデイは、そんな介護サービスのすき間を埋めるものだ。

だが、中には、行政の目が届きにくく、大人数を雑魚寝させたりする事業者もある。そこで国は昨年4月、お泊まりデイに関する指針を作った。(1)利用者は1施設あたり9人以下(2)1室あるいは1人当たりの床面積は畳5枚分ほどの7.43平方メートル以上(3)消火設備や非常災害に必要な設備を持つ――などだ。

「国の指針で自治体の理解が深まった。事業者もサービスの質の向上に動き出した」と話すのは、全国通所介護事業者連絡会(東京・墨田)の藤田英明会長。お泊まりデイ大手の日本介護福祉グループ(同)は今夏にも、個室のある施設を首都圏に新設する。

見学し確認を

自治体も実態把握を急いでおり、「良い施設」「悪い施設」の見極めは地域の介護事情に詳しいケアマネジャーに聞けば、つきやすくなった。ただ、家族などが施設に出向いて、どのような所に泊まるのかを直接確認した方がよい。

見学を受け付けるかどうかが最初のチェックポイント。見学がOKでも、寝室をあまり見せたがらないとか、通路にオムツやタオルが無造作に置かれているような施設は避ける。デイサービスの利用自体も変えた方がいいかもしれないと専門家は助言する。

川崎市でお泊まりを手がける「デイサービスふれあい家族」代表の中田覚史さん(43)は「夜勤職員1人でしっかりケアできる宿泊者は3人が限度。それ以上は責任を持てない」。施設によって運営方針はそれぞれ。家族は運営主体の考えに耳を傾け「宿泊を任せるかどうか考えてほしい」と話す。

◇     ◇

利用希望、保険外で1位

親などを介護する人の6割が「介護保険外のサービスを利用している」か「したいと考えている」。日本政策金融公庫総合研究所(東京・千代田)の調査で分かった。最も関心が高かったのは「お泊まりデイ」だった。

昨年12月、65歳以上の高齢者を介護する全国の20歳以上の男女1059人に尋ねた。保険外サービス利用は21.2%、利用したいと答えたのは39.7%。

利用したいサービスの1位は「お泊まりデイ」で35.5%。「家事代行」(27.1%)、「配食」(26.9%)が続いた。既に利用している中でも、お泊まりデイは17.8%と、有料老人ホーム(28.9%)に次いで2位だった。

お泊まりデイが知られるようになれば、さらにニーズは高まる。同研究所は「人手不足の中で介護の質をどう高めるかが課題」と話す。

(保田井建)

[日本経済新聞夕刊2016年3月10日付]

注目記事