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理想の寝室、壁で消臭調湿 快眠引き出す間接照明

2016/3/2付 日本経済新聞 夕刊

枕元上部のでこぼこした壁材は調湿・脱臭効果を備えている
 健康と質の高い睡眠は関係が深いとされる。それゆえに、理想的な眠りを実現する寝室への関心は高い。1日のうち7時間前後という長い時間を過ごす空間は、壁、床、天井から照明、窓に至るまで、工夫をこらすポイントも多岐にわたる。究極の寝室を目指す先進的な動きを追った。

 千葉県柏市に住む石原智子さん(31)は夫(28)と娘(5)の3人暮らし。不眠気味だった石原さんが、3年前の2013年夏に家を新築した際、とくに力を入れたポイントのひとつが寝室だった。様々な工夫を盛り込んで、環境を整えた。

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炭を塗った黒い天井と珪藻土の壁に囲まれた寝室(千葉県柏市)

 床材には宮崎・日南地方の飫肥(おび)杉でできた無垢板を使用。天然素材で柔らかく、足触りも心地いい。壁と天井には消臭などの効果があるといわれる炭を塗り、壁はさらにその上に、調湿効果があるとされる珪藻(けいそう)土をふんだんに使った壁材を塗った。珪藻土だけでは壁にくっつかないため、接着剤として天然のりを使った。床や壁、天井には施工時に消臭効果のある抗酸化溶液を吹き付けた。

 夜間は、壁に埋め込んで足元を照らすダウンライトと、枕元の2種類の間接照明で室内を照らす。眠りを妨げる強い光が目に入らないよう明るさを抑えた。朝に目覚めを促す太陽光が自然に入るよう、大きな窓を東向きに付けた。「においがこもらず、湿度もちょうどよく、常に部屋の空気がきれいと感じる。今ではすっと眠れるようになった」と満足そうな石原さん。

 石原さん宅を建てたのは、千葉県の一戸建て住宅会社、早稲田ハウス(松戸市)。寝室を重視した家造りを特徴とする。寝室は、壁材の珪藻土の含有率が他の部屋よりも高い90%。壁と天井に炭を塗るのも寝室だけだ。

 やはり1年半ほど前、大和ハウス工業の注文住宅で家を新築した香川県に住む男性(41)も寝室づくりを重視した。「『落ち着いた雰囲気で、よく眠れるように』と考えた」

 枕元は腰壁にして、上部は調湿・脱臭効果があり、凹凸がある外観が特徴の「エコカラット」というLIXILの壁材を用いた。壁紙も寝室にだけマイナスイオンが出るタイプを採用。断熱性能も高く、寝室に起こりがちな結露も全く生じない。妻は「娘がぜんそく持ちなので、最もこだわったのはクリーンな環境。部屋の空気がきれいで、とても寝心地がいい」と喜ぶ。

 2種類の間接照明は、片方が枕元で下から壁を照らし、天井に埋め込んだもう一方が足元の壁を照らす。「頭の周辺で少しだけ明かりをともし、入眠を誘うようにした」(大和ハウス工業香川支店の徳山善文氏)。枕元の縦長の小窓は落ち着いた雰囲気を醸し出す。東向きのため、カーテンをしても朝は自然に太陽光が差し込む。

 南側にはベランダと大きな窓を設けた。「布団をすぐ干せるように」という狙いだったが、日中は日光が差し込むため、冬場でも温かく、エアコンは夏にしか使わないという。

 天井は床と同じ木目調。「ガチャガチャした雰囲気にならないように、できるだけ使う色を減らした。雰囲気がすごく落ち着いた」と男性は語る。

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 睡眠・呼吸器専門クリニック、RESM(リズム)新横浜(横浜市)の白浜龍太郎院長は「寝室は自律神経をリラックスする方向に持っていくような環境が大切」と強調する。眠る時間帯に部屋が明るすぎるのはNG。眠気を催して、睡眠を安定させる「メラトニン」というホルモンの働きを抑えてしまうためだ。間接照明を頭上や離れた位置に置けば、光源が直接目に入らない。逆に朝はすっきり目が覚めるよう光を浴びた方がいい。体内時計をリセットしてくれる。

 温度と湿度も調整するのが望ましい。室温は夏は25~28℃、冬は18~20℃、湿度は年間を通じて50%程度が理想という。

 ベンチャー企業のTWO(東京・港)は4月から寝室のリフォーム事業に参入する。全国の工務店などから加盟を募り、床材や壁材、照明などを工夫した寝室作りをアピールする。寝室事業への新規参入の動きは今後も続きそうで、利用者は選択の幅が広がりそうだ。

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■カーテンで騒音カット
 小さな工夫を重ねることでも寝室の快適さは増す。例えば、朝になっても太陽光が入りにくい部屋なら、時間になると発光する目覚まし時計が便利。幹線道路沿いなどで外からの音がうるさい場合は、遮音カーテンも有効だ。

(浜松支局長 漆間泰志)

[日本経済新聞夕刊2016年3月2日付]

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