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燃料電池に使う水素って、どんな気体なの?

2016/3/1 日本経済新聞 プラスワン

水素を充填するトヨタ自動車の燃料電池車「ミライ」

■燃料電池に使う水素って、どんな気体なの?

スーちゃん 「次のエネルギーは水素だ」って、授業で先生が話していたよ。環(かん)境(きょう)に悪い物質を出さないからだと説明してくれた。水素って燃料電池に使われているんだよね。どんな気体なのかな。

■とても小さくて、ためるのが難しいんだ

森羅万象博士より 気体には窒素(ちっそ)や酸素、二酸化炭素などいろいろあるけど、水素は最も軽い。密度は空気のおよそ15分の1しかない。風船の中に水素を入れたら勢いよく飛んでいくよ。

 水素は宇宙で最も量が多い物質で、約4分の3を占めるといわれているよ。でも、地球の空気は窒素が最も多くて78%、次の酸素が21%、アルゴンが0.9%で、二酸化炭素が0.04%。水素は0.001%にも満たない。

 地球上では、ほとんどが水として存在している。水素は水の素(もと)と書くよね。水素が燃えて空気中の酸素と結びつくと水になる。生物の体にも多くふくまれている。

 水素が注目されているのは地球温暖化(おんだんか)を引きおこす二酸化炭素などを出さないクリーンな燃料だからだ。燃やしたときに発生するのは水だけで、生物や環境に悪い物質が出てこない。水素と酸素をゆっくり反応させて発電する「燃料電池」でも、できるのは水だけだ。燃料自動車の動力源や家庭用の発電装置として使われ始めた。

 水素を天然ガスや石油、石炭に代わる燃料として使えるようにするには課題もある。まず水素をどう供給するかだ。家庭向けの発電装置として使う燃料電池は天然ガスから水素を取り出している。燃料電池車に水素を補給する水素スタンドには、工場などで発生した大量の水素を運んで保管しておく必要がある。

 気体のままでは体積が大きいから温度を下げて液体にする。天然ガスはこうやっているよ。水素を液体にすると体積は気体のときの約800分の1に減る。ただ、セ氏マイナス253度まで冷やさなければならないから大変だ。

 燃料電池車では水素をタンクにぎゅうぎゅうにつめ込んでいる。その圧力は大気中にあるときの700倍で、1センチメートル四方の角砂糖にウマ2頭が全体重をかけたときと同じだ。しかも、水素はきわめて小さくてちょっとしたすきまから少しずつもれてしまう。タンクに使う材料や作り方を工夫しているから、どうしても高くなってしまう。

 大量の水素をどうやって作るかも大きな問題だ。水素は自然界に単独では存在しない。実験では、亜鉛やアルミニウム、鉄などの金属にうすい塩酸を加えるとあわになって発生する。水素は水に溶けないから「水上置換(ちかん)」という方法で集める。だけど大量に安く作るのはむずかしい。

 現在は天然ガスなどを水蒸気と反応させて作っている。このときに二酸化炭素が出てしまう。

 水に2つの金属板を入れて電気を流すと「電気分解」と呼ぶ現象が起きて、水素と酸素が発生する。ただ、水素と酸素は強く結びついており、切りはなすのに電気代がかかる。火力発電所から大量の二酸化炭素が出ていることもわすれてはならないよ。太陽光や風力で発電した電気を使う方法も研究されているけど、そうかんたんではない。まだバラ色の未来が約束されているわけではないんだ。

■激しく燃えるけど、拡散もしやすい

博士からひとこと 水素ははげしく燃える。実験でびんに集めた水素に火を近づけるとポンと爆発(ばくはつ)音がする。大量の水素に火がつくと危険で、福島第1原子力発電所では水素が爆発してがんじょうなコンクリートの建物が吹き飛んだ。
 でも水素はどんな気体よりも軽いから、もれても空気中ではあっというまに広がる。だから、屋外でもれても火がつく前に拡散してしまうことも多いそうだ。各地で建設されている水素ステーションでは、タンクをコンクリートの壁(かべ)でおおっているほか、もれても水素がすぐに拡散するように風が通りやすい設計にしているよ。

(取材協力=東芝未来科学館)

[日経プラスワン2016年2月27日付]

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