アメリカ最後の実験 宮内悠介著音めぐる言語世界を思索

(新潮社・1500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

難関の高名な音楽院なんていうと、クラシック音楽を想像してしまうが、本書の舞台は、アメリカの西海岸に設定されたジャズの名門学校である。

幻想の音楽院に相応(ふさわ)しく、入試は奇妙奇天烈。しかも、主人公・脩(シュウ)の父はかつて合格したあと、失踪してしまったという。

成長した息子は父を追って入試に挑戦。様々な境遇の挑戦者に出会い、自らの才能を開花させ、父失踪の謎を解き明かす。

ジャズをめぐる風景は、アメリカの歴史と切りはなせない。本書は音楽院と因縁を持つ人々の姿に、環太平洋的な精神構造を重ね合わせ、さらに幻想のハイテク楽器を登場させて、音をめぐる言語世界を思索する。

極上の音楽を味わうような、お洒落(しゃれ)な逸品だ。

★★★★

(ファンタジー評論家 小谷真理)

[日本経済新聞夕刊2016年2月25日付]

★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…

アメリカ最後の実験

著者 : 宮内 悠介
出版 : 新潮社
価格 : 1,620円 (税込み)