日経実力病院調査 診療体制、地域連携が深化情報共有、転・退院迅速に

旭川赤十字病院(北海道旭川市)は地域での診療情報の共有を主導している
旭川赤十字病院(北海道旭川市)は地域での診療情報の共有を主導している
診療体制が充実した病院はどこか――。日本経済新聞社が実施した実力病院調査では、在院日数の短縮や割安な後発医薬品へのシフトなど効率化に取り組む病院が高評価となった。重症患者を多く受け入れながらも入院を短くするため、各病院は地域連携やリハビリも強化。患者や地域の声に耳を傾け、質を高めようとする動きもみられた。

旭川赤十字病院(北海道旭川市)は急性期を中心とした診療体制の特性を評価する「DPC機能評価係数2」の6項目が全国で唯一、オールAだった。入院患者の治療で後発薬の使用状況をみる「後発医薬品係数」は、2013年9月までの1年間の実績に基づく前回調査ではC評価だったが、今回はAになった。

後発薬は特許切れ成分を使うため、新薬に比べ薬価(薬の公定価格)が安い。同病院が使用を本格化したのは14年1月。入院治療で使う薬に占める割合を数量ベースで従来の約30%から約70%へと一気に引き上げた。取り扱う薬の入れ替えで現場が混乱しないように「各病棟に薬剤師を配置し、管理体制を強化した」(牧野憲一院長)。

後発薬に前向き

国は13年、通院も含む後発薬の使用率目標を「17年度末までに60%以上」とし、昨年6月には「16年度に60%以上、18~20年度に80%以上」に高めた。旭川赤十字はそれを意識し昨年10月には入院治療で90%を超えた。

地域連携にも積極的だ。08年には診療記録の情報を地域の医療機関に提供する「旭川クロスネット」を開始。牧野院長が「患者の退院や転院がよりスムーズになった」と話すように、12年度で平均13.3日だった在院日数は14年度には12.2日に短縮された。

同ネットが発展する形で旭川医科大病院、旭川厚生病院なども加わった「たいせつ安心i医療ネット」が旭川市医師会の下で14年にスタート。それぞれが他病院での治療歴を把握し、的確な診断・処置につなげている。

在院日数の短さなど5項目がA評価だった東京都立墨東病院(東京・墨田)。救急搬送される重篤な患者は少なくないが、早く日常生活に復帰できるように、集中治療室(ICU)で体を動かしてもらう「急性期リハビリ」に力を注ぐ。

14年9月から救命救急センターに理学療法士2人が常駐する。それ以前は急性期リハビリを行うのはICUの患者の2%だったが、現在は約半数が血圧や投薬状況などを確認しながら少しずつリハビリを行う。

筋力や飲み込む力などの衰えをできるだけ防ぐことで、他の施設に移ることなく直接、自宅に戻る患者が増えた。新見昌央リハビリ専門医は「看護師や薬剤師らとチームで取り組み、質を上げていきたい」と意気込む。

「365日24時間、断らない救急医療」がスローガンの国立病院機構・熊本医療センター(熊本市)には、年間で約9000件が救急搬送される。大学病院に準じる機能を持つ2群病院の中で、4項目がA評価だった。

自治会長と連携

地域住民に意見を聞く会議を年1回開催している(熊本市の熊本医療センター)

新任医師らの研修では「相当な覚悟を持ってほしい」と呼びかける。自殺未遂や薬物中毒など、精神科の治療も必要な県内の救急患者をほぼ一手に引き受けるためだ。

地域の信頼を得るため、投書などで寄せられた患者の意見それぞれについて幹部会で改善策を話し合う。地域の自治会長らが参加する「モニター会議」も年1回開催。例えば「救急外来の待合室で待つ家族に検査状況などを逐次、教えてほしい」という要望には、看護師を増やして対応した。

地域の声が医師や看護師らを鍛え、診療体制に磨きをかける。河野文夫院長は「患者が増えるほどスタッフの意欲が高まり良質で安全な医療につながる」と考えている。

◇     ◇

機能評価 上位に倉敷中央病院 安全確保へ研修充実

日本医療機能評価機構の認定病院では、精神科医療中心の嬉野温泉病院(佐賀県嬉野市)が81点で首位だった。疾患ごとに定額の診療報酬を受け取るDPC制度の導入病院では、倉敷中央病院(岡山県倉敷市)が80点で最高得点。同病院は医療の安全性を高めるため、病院全体で改善につなげる体制を整えている。

医療事故につながりかねない事例は様々な診療科で起きる。倉敷中央でこれを収集するのは院長直属の「医療安全管理室」だ。年間約900件の報告のうち、特に危険性が高い事例は、その科と一体となって根本的な原因を分析して対策を検討する。

他の診療科も同様の対策をとるべきかどうか。各科の現場担当者らが集まり、月1回の「クオリティーマネジャー会議」で協議する。必要なら病院全体のマニュアル改定案を作成し、院長や診療科の主任部長らが参加する「患者安全推進委員会」で決定する。

新任医師には1泊2日の「セーフティマネージメント研修」への参加を義務付ける。「看護師らに指示する際には、注意すべきことについて声掛けを欠かさない」など、産業界の手法を取り入れた「KY(危険予知)」教育を実践している。

新居伸治・医療安全管理室長は「患者本位の医療を実現するため、医療安全は最低限実施すべきこと。全体で徹底する必要がある」と強調する。

調査の概要
医療機能評価機構の得点 公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼で医療の質や安全管理、患者サービスなどの項目を審査した結果を100点満点に換算した。点数の前に*があるのは13年4月以降の評価方法「3rdG」で審査された病院で、各項目をS=4点、A=3点、B=2点、C=1点として合算、100点満点に換算した。
DPC機能評価係数2の格付け 急性期を中心とした病院の診療体制の特性が分かる指標。厚生労働省が(1)入院期間の短さ(効率性)(2)重症など治療が複雑な患者の受け入れ(複雑性)(3)より多くの疾患の治療対応(カバー率)(4)救急患者の受け入れ(救急医療)(5)がん、脳卒中、周産期医療への貢献(地域医療)(6)入院患者への後発医薬品の使用(後発医薬品)――などの係数を公表している。
日経調査は厚労省が昨年4月に公開した1580病院のデータを集計、分析した。項目別に係数の値が大きい順に4等分し、上位からA~Dで格付けした。
表の掲載基準 同機構の得点が70点以上で、大学病院(1群)、大学病院に準じる機能を持つ病院(2群)、その他の一般病院(3群)ともに、格付けがすべてB以上の病院を掲載した。

[日本経済新聞朝刊2016年2月21日付]

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