私の書道教室 アプリで手の中に
隙間時間使って美文字マスター
自分の字は何点?
そもそも客観的にみて、自分の字はどの程度うまいのか。そんな疑問に答えるのが、教育アプリを展開するグローディング(佐賀市)の「美文字判定 書いて添削」(無料)だ。肉筆のできばえを採点してくれるアプリで、点数アップを目指せば練習にもやる気が増す。月間ダウンロード数は約1万件と大人気だ。
練習できる文字はひらがな46文字と基本漢字50字。漢字のメニューが少ないようにも思えるが、「他の字に応用できる50字を厳選」(代表取締役の武藤樹一郎氏)しており、効率よく練習できる。
試しに「快」の字を選んでみると、真っ白な入力欄が現れる。人さし指で直接書いても、タッチペンで入力してもいい。「快」の制限時間は35秒。「快」の「りっしん」偏は書き順を間違えやすく、正しくは左点、右点、縦棒の順となる。書き順をでたらめにすると、アプリが即座に警告してくれる。
書き終わるとただちに点数を付けて判定する。85点以上は「美」、65点以上は「並」、それ未満は「汚」文字だ。ただ点数を付けるだけでなく、美文字になるためのアドバイスも的確。「とめ」や「はらい」、線と線の間隔、偏とつくりのバランスなど、書いた文字のどこがダメで、どう直せばよいか一目瞭然だ。
「並」判定はハードルが低いが、「美」を出すのはなかなか難しい。横浜市の会社員、高橋明穂さん(24)は腕に覚えがあったが、なかなか高評価がとれず「自分は案外、くせ字だった」と気づいたという。アドバイスでコツをつかみ、「美文字」判定をとって画面いっぱいの紙吹雪を見るのが「やみつきになる」と笑う。
アプリを開発した武藤氏は「悪筆にコンプレックスがあった」と明かす。アプリの人気に「美文字ブームが高まっている」と手応えを感じている。
きれいな字を書くコツをつかんだら、自分の名前や座右の銘などでも練習したくなる。ハップ(東京・渋谷)の「美文字」(無料)は手本とする文章を自由に入力できる。字体も楷書、行書、ペン字の3種類から選べて実用的だ。
写経で心もきれいに
美文字効果には仏教界も注目する。曹洞宗の近畿管区教化センター(京都市)が開発した無料アプリ「心の鏡」では、座禅や寺院巡礼に加え、写経を疑似体験できる。
お経は276文字と長めの般若心経と、33文字と短い四弘誓願文(しぐせいがんもん)の2種類あり、時間に合わせて好きな方を選べる。薄墨の手本を一文字ずつなぞっていく仕組みだ。
無心で文字をしたためるうちに雑念が尽き、心が落ち着いていく。写経が終わったら願いや悩みなどを添えて「納経」することも可能。
アプリが登場して2年間で納められたお経はおよそ3万に上る。「写経には心を落ち着かせ、座禅と同じ効果がある。とりわけ若い方に仏教の魅力をお伝えできれば」とアプリを考案した鈴木顕道氏は語る。
写経はいつでも始められ習慣にしてもいい。年賀状から暑中見舞いや礼状まで、その気になれば手書きの機会はまだ多い。紹介したアプリはすべて、iPhoneとアンドロイド端末の両方に対応。空き時間を利用して気軽に取り組める。アプリで鍛えて、達筆デビューを狙ってみては。
(証券部 溝呂木拓也)
[日本経済新聞夕刊2016年2月18日付]
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